2006年12月アーカイブ

今年も一年、どうもありがとうございました。
2007年もよろしくお願いいたします。

今年は、若い人、同じ年代の人、自分より年上で経験を重ねた人…
出会いの多い一年でした。
一時は家にこもりがちで、
自分の世界を追求することに関心が向いていました。
今年は、人様からいただく刺激に対して
敏感になっていたような気がします。

唐突かもしれませんが、
最近、飲みすぎた朝、なぜか思うのは、
戦場で向かい合って
一発触発状態にあった兵士どうしの気持ちです。

月並みですが、無病息災。これに勝るものはなし。
いや、病気であってもどんな状況であっても
生き抜くタフさが欲しいです、私は。

偶然生まれてきた者どうし、
同じ船に乗ってゆらゆらどこまでも。
行き先はわかりませんが、ともに流れていきましょう。

写真は、12月31日の深大寺。
なぜか「氷」の札がいまだに…。
松葉茶屋の屋外にて焚き火を眺めながら
深大寺ビール、味噌田楽、そば豆腐、
そば味噌、ざるそばをいただきました。
凍えましたが、火を眺めると心が落ち着きます。

今日もぎりぎりまで、梱包・発送・倉庫の整理と
コマネズミのように働いておりました。
ワインと日本酒を買い込んできましたよ。
元気で働き、元気に飲み、
元気に食べられる奇跡が続きますように。
皆様のご多幸をお祈りいたします。

2日続けて、岡崎武志さんのイベントへ。
お目にかかるのは、今週3度め。
親よりたくさん、岡崎さんにお会いしているなあ。

昨晩は、コクテイルで岡崎さんの
2006年のニュース20を聞く。
話上手なのはわかっていたが、
その後、岡崎さんがギターをかきならして歌った。
この歌とギターが、ひじょうに沁みた。

学生時代に50曲、オリジナル曲を作ったそうだ。
ギターの腕前は想像以上で、
アルペジオなど、かなり弾き込んだ人ならでは。

プロで始終演奏している人と異なり、
むきだしの岡崎さんといいますか。
若かりしころの苦悩多き孤独が伝わってきたといいますか。
岡崎さんの裸の心模様が伝わってくるようで、
私が、岡崎さんの恋人だったとしたら(なわけないですけど)
そっと抱きしめてあげたいと思っただろう。

コクテイルに行くたび、あまりの居心地のよさに
ついつい飲みすぎてしまう。
昨日はビール、さらにワイン3本、ほぼふたりであけてしまった。
ワイン1本1400円というのは、
「飲め」「飲め」といわんばかりの値段だ。
さすが、コクテイル、である。
電車で帰り損ねて、さらに焼き鳥屋へ行ったものの、
もうほとんど飲めず、という有様でした。

日を改め、本日30日は三鷹・上々堂で
加藤千晶ミニライブ&岡崎武志さんとのトークショー。
ゲストは久住昌之さん。
最近、車でずーっとずっとヘビーローテーションでかけている
アルバムを持参してサインしていただいた。
「自由の筈」を生で聴けたのがうれしい。
楽しそうに足を揺らしながら演奏する久住さん。
加藤千晶さんのハモリが最高。

岡崎さんは、インタビューの達人である。
加藤千晶さんの曲の好きなフレーズを発表し、
さらに、鋭いインタビューをぶつけて
加藤千晶さんの人となりを浮き彫りにする。
千晶さんの歌には「楽しさとさみしさと」があると岡崎さん。

大好きなかこさとしさんに何度も断られながらも
アルバム用のイラストをついに描いてもらった話がおもしろかった。
物心ついてすぐ好きだった本を持参した千晶さん。
その本をめぐる話には爆笑。
加藤千晶さん、詞や曲がいいなあと思っていたが、
人柄も魅力的だった。
私が男だったら、あんな人を好きになるんじゃないかとまで思ってしまった。

上々堂には客として行きたいと思っていたのだが、
ついに、というか、石丸さんにご挨拶させていただく。
石丸さんのトークショーも聞いてみたいなあ。

あとから、岡崎さんのお嬢さんと奥様がいらしていたことを知る。
前に用があって、お宅にお邪魔したとき、
お二人と楽しく過ごさせていただいたので、
ぜひお話したかった…。
店を出てから「岡崎さんのお嬢さん、いたんじゃない?」と家人に言われた。
店を出る前に言ってよ、と思う。

店舗をやってみたい理由、ということで
ちょっとした書き物をしないかとお誘いいただいたのですが。

店をやってみたいという話は
しばしば市場で出会うネット書店仲間からも出るのですが、
他の人はどうなんでしょう。

私の場合は…、うーん、自分でもよくわからないのです。

もちろん、理由がないわけではないです。

●お客様が実物をご覧になりたいとご希望なさったときに
対応できる場所が欲しいこと。

●どのみち、本の置き場所が必要なので、
本の置き場所 兼 ショップにできたらと思うこと。
これは何年か前、とあるブックカフェさんからも薦められたことです。
ちなみに、その人は
「自分の店が、わが子のように可愛い」
と話していました。

●古書店という空間が好きなので、
自分の好きな本を並べて、まずは自分が居心地のよい店づくりをしてみたいこと。
自分と似た感覚の人がいるとしたら、その人のためにも。

なぜ店をやってみたいのか…。
やってみたがり、だからなのかもしれないですね。
好奇心もあると思う。

それから。
メールでお客様とやりとりをしていく楽しさを覚えてしまったので、
ひょっとしたら人に会いたいんじゃないですか、ね。

来てほしい人ばかりがやって来るわけでないことは
うすうす知っているんですよ。
阿佐ヶ谷の古書店・元我堂で短い期間でしたが仕事しましたしね。
学生時代から、各種アルバイトを体験してますしね。
ひとり店番をしているとき、
新興宗教の勧誘とか、しつこい男の人とか、
嫌な女とか、いろいろな人が来たらどうなんでしょうねえ。
セクハラを受けた女性店主さんの話も聞いています。

やるとなったら、自分を律してきちんと店番しなければいけないこと。
店をやり始めたら、家賃や経費を払わなければいけないので、
毎日の売り上げが気になって気になって大変だということ。
お客様が来ない時間のほうがおそらく長いこと…。
あれこれ、聞いてはいるんです。
それでも、やってみたいと思うのはなぜか。

今日は、お客様から電話を何本かいただきました。
当方は一般住宅なので電話番号を公表していないのですが、
目録には番号を掲載しています。
目録でご注文くださる方はネットをおやりにならない方も多いので、
やりとりをする際、電話番号を掲載する必要があるのです。

お電話いただいたうちのおひとりは、
五反田展の会場にご来場なさった方でした。
抽選して、私は名簿にその方の名前を確かに書いておいたのに
ご来場されたお客様がおっしゃることには
「抽選結果を聞いたら、はずれていると言われてしまったんです。
でも、あなたから当選なさいましたと手紙が届いたので
不思議に思って」とのこと。
応募のFAXに「ご来場」と書いてあったので、ぜひ一目でもご挨拶したかったです。
その方も、古書の状態をご覧になりたかったそうです。
なのに、ちょっとした手違いで果たせず、となってしまいました。残念。

お店があったら、どうなんでしょうね。
出会いがたくさんあるのでしょうねー。
楽ではないでしょうけれど、どうなんでしょう。
店を何年もやっている人からしたら、
甘い考えだとお感じかと思いますが。

旅猫雑貨店、石田書房さん、
良い店になっていってください。楽しみです。

明日はコクテイルで岡崎武志さんイベント。
あさっては上々堂で、やはり岡崎武志さんと
加藤千晶さんのイベントです。
自分が店をやっていたら、これほど自由にあちらこちら
行けなくなるのかもしれないけれど。
コクテイル、上々堂でお目にかかれそうな方々、またそのときに。

小確幸

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年内に発送をご希望の方が多い。
また、大掃除で出たものだろうか、
何箱単位の買取ご希望が多く、
見積もりと査定が追いついていかない。
(お待たせしている方、申し訳ありません)
何がなんだかわからないぐらい、次から次へとめまぐるしい。
なのに、私の脳味噌は、連日のビールづけ状態により、
くるくる回転してくれないのです。
困ったことではありませんか。

昨晩の雷雨で洗われたかのように、
輝くような青空。東八から見る山並みの
なんて美しいことでしょうか。

受注を終えて、神保町へ
先日の落札品を引き取りにいく。
まあやだ、道が混雑しすぎですわ。
行きは1時間50分、帰りは1時間半たっぷりかかりましたことよ。
そうはいっても、年末の渋滞はやむをえないわけで。
せめてもの慰め、
眠気覚ましをかね、CDを聴きながら歌って。

久住昌之&ブルーヒップ「自由の筈」
(「四畳半ビヨーク」最高。何度聴いてもいいね。
曲によって入っているボブさんのベースがとても素敵)
U2
矢野顕子 ほか。

U2は運転の友としては不向きだった。
英語は歌えないので、
ボノの歌声が子守唄のように響く。
運転しながらコクリといきそうで、急いでCDを交換。

古書会館は明日午前いっぱい。
2階のFくんに「明日は来ないんですか。
お茶でも飲みましょうよ」とからかわれて(?)、
「今度、高円寺で飲もうよ」と返しておく。
Fくんはしばしば、
高円寺あたりの酔っ払いと化しているらしい。
真偽のほどは不明ですが。

目録の当選品をお客様に手渡し。
絵本・児童書を扱う古書店が一軒なくなるかもと、さびしい話を聞く。
とても良い店なのに、本当だとしたら惜しいことだ。
「店は絶対つぶしませんよ」と店主さんが断言していたのになあ。
どうなんですか、店主さん?
とても人ごととは思えず、沈んでしまう。

大量の本(6本+7本+4本+19冊。
まあ、350冊から400冊ぐらいでしょうかね)
を積んで、西へ西へとひた走る。
運んだ本を倉庫に持っていって整理しないといけないな。
さて、これから発送ですよ。
お客様からのいただきもの、まだ味見もしていないため、
今晩いただいてから感想とお礼をメールしようと思う。
目録当選者の方の対応が遅れておりまして、
大変、申し訳ないことです。今晩・明日中になんとかしたいと思います。

明日の天気はどうだろうか。
洗濯物も布団も干したいねえ。
今日仕事を頑張って、明日はちょっとでもいい、
散歩でもしたいもんだなあ。
ささやかすぎる夢ですねえ。
「小確幸」と村上春樹が書いてましたっけね。

かのOさんにまでご心配をおかけしてしまったようですが、
無事です。なんとか元気でやっております。
こんな駄文なのに「ブログ読んでいます」とおっしゃってくださった
F舎さん、すまんことです&ありがとうございます。
組合の市場でお会いしましょうね。

海ねこの更新がしばらくできていない。
HPへのアクセスが激減するかと心配だったのだが、
ありがたいことに、そうはならず。
それもこれも12月に毎日一篇ずつ連載した
「クリスマスの本 アドベント・エッセー」のおかげだと思っている。

タイトルは、クリスマス前、毎日ひとつずつ窓をあけると違う絵があらわれる
「クリスマス アドベントカレンダー」にちなんだもの。
沼辺信一さんも読んでくださっていたそうで、
ブログで触れていただいた。

このエッセー、書き手はカーネーション・リリー・リリー・ローズさん。
海ねこが常々お世話になっている方である。
ときには本を買っていただき、ときには蔵書をお売りいただき、
ロンドンに旅する前は役立つ情報をたくさんいただき、
英国の児童文学について教えていただき。
クリスマスのテーブルの写真をお送りいただいたり。
感謝してもしきれないぐらい、お力になっていただいている。

12月1日から25日まで1篇ずつ連載だったのだが、
“BOXING DAY”として本日26日が最終回。

自分ひとりでできることには限りがあるし、
店舗があるわけではないので他店のように素敵なイベントを
仕掛けられるわけでもない。
しかし、海ねこは、さまざまな方の文章を掲載することも含め、
企画を考えて、あれやこれやとやっていけたらと思う。
大勢の方にご来店いただける(つまり、ホームページにアクセスしていただける)
オンライン古書店としてやっていけるように。
本を買ってもいい、買わなくてもいい、
いずれにしてもご来店いただけるような魅力ある店にしていけたらと思う。
オンライン古書店の可能性は無限にあると思うのだ。

五反田展のご報告が、まだだった。
五反田展そのものの売り上げがかなり良く、
終了後、皆の間に心地よい結束感があったように思う。
海ねこのお客様にご来場いただき、お茶を飲んだり、
「ブログ読んでいます」とお声をかけていただいたり、
催事は楽しい。
体力的にはハードだが、
家人が搬出を手伝ってくれ、どうにか腰痛にならずに済んだ。

昨日は中央市会。
お客様から電話で頼まれた古いビーズの手芸書と、
映画用にお探しの方がお待ちなので
あの時代の児童文学全集とが目当て。
ぴたりとあてはまるものではないにしても、
あの本もこの本も含め、児童書の山をカーゴいっぱい落札した。

今月は五反田展もあり、
さまざまな方からご注文をいただき売り上げはおかげさまで、なのだが、
一方で、市場での買い物額がすさまじい。
オンライン古書店といえども、
「~、ありますか?」と探しものについて問い合わせが多いので、
対応できるよう、いろいろ持っておかないと。
HPに掲載する魅力的商品+
お探しの方がいらっしゃりそうな古書のストックが必要なのである。
あくせくあくせく買っては運び、買っては運び。
結果として、貧乏ヒマなし一直線。♪ららら~(Aマイナー)。

また、車でとりにいかなければ。
年末年始は古書会館も休みとなる。
市場の荷物は28日・木曜
午前までに引き取りが原則だ。
しかし、外は雨、嵐。

受注、発送、五反田展目録の対応、買取対応…
目がまわるぐらい、やることが山積している。
「そんなに忙しいなら飲みにいかなければいいのに」とは家人。
まったくそのとおりです。
しかし、忙しければ忙しいほど違うことがしたくなる性、みたい。
今夜もまた飲み会。あらあら。

さて仕事仕事。どこから手をつけようか。

海ねこの新着本更新、遅れぎみで申し訳ないですが、
年末年始、落ち着いたとき少しずつでもできるといいなあ。

早稲田・立石書店オープニングイベントに
立ち寄らせていただいた家人(お、“家人”に戻った)。
南陀楼さんから本2冊とフィッシュマンズDVD、
そして、蟲文庫で本1冊、購入させていただきました。
皆さん、お揃いだったそうで楽しそうー。
行けばよかったー、
様子を聞くにつけ、
今日なら、もしかして頑張れば行けたかもーと地団太踏む海ねこでした。

旅猫雑貨店の金子さんが
「寝不足で、かえってハイ・テンションになってますー」と
頑張っていたそうです。フレーフレー、旅猫さん。
くれぐれもご無理なさらずに。

“アルゼンチン音響派”といわれている
フアナ・モリーナ“SON”(←非常によい。お薦め)を聴きながら
ワイン(チリ・ピヂュコ・クリーク 2003年)など。

ふちがみとふなとのベーシスト・船戸博史さんが参加していた
SIGHTSの「ELSUR」を聴く。
そして、つれれこ社中「雲」を聴く。
鈴木常吉さん(元・セメントミキサーズ。うわー、
「いか天」で好きだったバンドの人ですよー!
「ぐるり」に連載。「読んだほうがいい」と家人)、
S子さん絶賛で、私も生で聴きたい上野茂都さん などなど。

「炊事節」--ああ、S子さん、これ知ってます。耳になじみがありすぎ。
家人が好きだと、よくかけていた曲でした。
「♪キャベツの芯は捨てないでー。
細かくおろして餃子の具」…
ねこジャケットのアルバムのが欲しい。
「ディスク・ユニオンにあったんだよー。
あまりないんだよ、こういう感じは。なんか(胸に)残る」
と家人が言いました。
ねこジャケット、買ってくださいと懇願した次第です。

「借家と古本」(荻原魚雷さん コクテイル文庫)、
常々、私がいいと言っていたのですが、
家人の希望により貸してあげました。

あまり意味がない書き込みですが、
たまにはいいか。

Iころさん、あなたの言うとおり、
忙しかったりストレスがあったりすると
どうも書いてしまうようですよ。今日ありがとう、家人がお世話になったそうで。

おっと、書き忘れた。
同乗させていただいた赤帽さんの話が面白かったです。
赤帽さんはここ数年でかなり減っていること。
それでも、バイク便より安いので、
書類1通届けるために利用する人がいること。
ファミレスからの依頼で、卵6ケース届けたことがあること。などなど。
私たちが一般的に想像する以上に
さまざまなーー実にさまざまなものを運んでいることを知りました。
引越し屋さんと赤帽さんは面白いですよ。
本、造りたい人、いませんかね。

無事、搬入が終わりました。
五反田は、本の散歩展で2度体験したので、
次回はひょっとしたら本棚3本+均一ぐらいいけるかもと
自惚れたことを思ったりしております。
あんなに準備が間に合わないと大騒ぎしたくせに、
棚に本を並べるのはなぜだか好きなんです。

一部、値札つけが終わっていないものもありますが、明日かあさって。
目録の当選者リストを作ったり、
納品書を用意したりしなければと思うのですが、
寝不足なので明日にしよう。
朝8時半、五反田集合ですって。
いろいろやってから出掛けなければ、なので朝5時起き、かな。

ところで、バタバタしていて忘れかけそうな勢いでしたが、
もうすぐクリスマス、ですね。
20代ぐらいは、クリスマスといえば
だれとどうやって楽しく過ごすか
命がけ…みたいな。
30代ぐらいは、ひとりででもなんとか
ワインを傾けながらレンタルビデオでも見て紛らわしたりとか。

今年のクリスマスは、そうですねー、
目録品の発送、そして、最終の中央市会ですねえ。
中央市会ーーすなわち、支払いと
先週、出品したけれども
売れなかった(「ボー」という)商品の引き取りと。
催事が終わったら、海ねこの新着にかかりたいと思うし。

年末年始が近づくたび、思い出すのは
小笠原の「お母さん」。
わが子のように私を可愛がってくれ、
私は本当に「お母さん」と呼ばせていただいていました。
可愛がっていたセキセイインコのピーちゃんが
亡くなったとき、「ピーちゃんが死んじゃったー」と
嘆き悲しんでいたお母さん。
お母さんは心臓が弱く、小笠原で倒れたのですが、
島には小さな診療所しかないため、
ヘリで都立・広尾病院に搬送されました。
入院先のベッドで、お母さんは
「お正月はどこでどうやって迎えているか。
小笠原か、(故郷の)土佐か」
と夢見る少女のような瞳で語っていました。
しかし、お母さんが新年を迎えたのは、
小笠原でもなく、土佐でもなかったのでした。
というのは、新年を迎える以前に命が尽きて…。
お母さーん!

今日は、南部レオブックスさんのご不幸があり、
私は面識がなかったので行きませんでしたが、
皆さん、お通夜に出掛けました。
そのため、通常より早く始まり、早く搬入が終わりました。

先ほど、電車の中で「古本屋ーその生活・趣味・研究ーー」創刊号
(昭和61年)をぱらぱらめくっていました。
ちょっと長くなりますが、
「古本屋八十二年」三橋猛雄(神田・明治堂書店)より引用。
「大勢の親友が出来た事も古本屋になってよかった事だ。
同業は皆小店ながら一国一城の主として
吾が道を歩いている人である。
それだから上下の距りはなく対等のつきあいである。
互に扶けあう事はあっても他を利用しようとする者はない。
だからお世辞ぬきのざっくばらんのつきあいである。
こうしたつきあいは親しく長く続くものだ。
然し私は長く生きすぎた様だ。
親友は次々に先に逝ってしまいとり残されて淋しい。
…一生を古本屋で通し得た事を幸せと思ふ」

クリスマスに年始。
街がにぎやかになればなるほど、
真逆な方向に思いがいくのは何故なんだろう。
まとまりのない文章になりましたが、
明日は楽しく飲めたらいいと思う。

五反田展、22日、9時半から18時、
23日、10時から17時。
天気がよくないかもしれません。
寒いかもしれません。
そんなときこそ、熱気いっぱいの古書展会場へぜひご来場くださいませ。

もしも海ねこに話しかけてくださる方が
いらっしゃるようでしたら、ぜひぜひ。
搬入・搬出・当番のとき以外、ヒマです。
休憩のとき以外は会場のどこかにおりますので、
見当たらないときは帳場にでもお聞きくださいませ。

五反田展、古書マニアのおじさまたちが
大勢、いらっしゃることでしょう。

なんと場違いな、と言われそうですが、
編物好きの女性、あるいは男性がいないとも限りません。
編物の本を、戦前のものは除いて放出することにしました。
少しずつ集めてきたのですが、
海ねこHPにアップするといっても
いつになるかわからないし、
下手したら季節が一巡りしてしまいそうで。

60年代の編物、模様編みなどもあります。
ウェディングドレスを編むなど、発想がすごいです。

編物の本って、眺めているだけで
心にぬくもりを覚えます。

眺めていて、ふと思い返したのは、
学生時代、女友達に
「誰よりもいちばん先に結婚して、
誰よりも早く子供を産みそう」と言われたこと。
平々凡々なのは今も変わらないけれども、
今の私は、ときどき“ノミヤマノミコさん”と化し、
今はこうして古書の値札に値段を書き込んでいる。
人生とは、かくも不思議なものなのね…という感慨です。

FAXが鳴るたびに、目録の注文かと思って飛んでいくと
組合の方の訃報だったり。
青島幸男さん、岸田今日子さん…
寒いと人が亡くなりますね。
高校の同窓会に行ったら、
同級生、同窓生が3人ほど亡くなっていました。
なんだか、ぼーっとしている間に
自分に与えられた時間が尽きてしまいそうだなあ。

編物の話から、いつの間にか、こんな話に。
うーん、今日は労働しました。
値札貼りより、ノミヤマノミコさんになりたい気分。
明日めいっぱい頑張ったらノミコさんになっちゃおうかなあ。
けど、催事初日、遅刻したらブーイングだよなあ。
海ねこのお客様、イメージを壊していたら悪いですね。

明日、搬入のため、
本日は終日、値札貼りのつもり。
無心に頑張っていて、
メールチェックして、はたと気づく。
はっ、私にはやるべきことがまだまだあったんでした。

ありがたくも、お客様への発送が大変多く、
梱包・発送だけで1日、必要なところです。

薄っぺらいお詫びの言葉など
どなたさまも必要とされていないと思います。
10の言い訳より、本を早く丁寧に送るべし。
承知しております。
できるところまで、とにかくやります。

どこでもドアーをお持ちの方、
1日レンタルしてください。

催事は今やっているだけにして、
もう増やさないようにしたいと思います。
不器用な人間は不器用なりに
青空の下、前を向いて歩いていけばいいんだ。
陽光は、だれのもとにも降り注ぎますからね。

追記

五反田に往復する時間とエネルギーをほかに向けようと、
他店にご紹介いただいた赤帽さんに依頼。
運転はプロにおまかせして、
明日朝、一度に運びこむことにしました。
催事のときは遅刻厳禁。
なのに前もやってしまった…。
わらべさん、揚羽堂さん、北上さん、早めに着くつもりです。
万一、ちょっとでも危なそうなときは電話しますね。

この時期、渋滞しないわけがないので、
運転がなくなっただけでずいぶん気持ちが楽。
さあ、発送にいそしみますよ。
終わったら値札貼りの続きね。じたばた生きてます。
    

風呂場と廊下の境目あたりで
ひたすら値つけ。
隙間風が入ってくるので、
室内にいながらにしてダウンにマフラーの重装備で。
なぜそんな場所で値つけかというと、腰痛を防ぐため。
我が家はちっちゃな二階建て。
暖房のきいた二階で作業すればいいのに、
以前、重たい本を抱え持ったまま階段の上がり降りを重ねて
腰を痛めたことがあるから。
それで、風呂場の前に座り込み、
変な姿勢で、しこしこ地味ーに作業しているのだ。

今回の五反田展、どんな本を持っていこうか、
木曜が搬入日だというのに、まだ決めかねている。
先日、海ねこのお客さまから
仕事を休んで足を運んでくださるとメールをいただいた。
店をやっている人は、こんなふうにお客さんが
わざわざ店に来てくれることがうれしいのだろうなあと想像している。
海ねこは店舗がないので、お客様にお目にかかれるのは催事ぐらい。
久々にお目にかかれるので、楽しみ。
その方がお好きそうなものも何かしら持っていけたらと思うが、
本を選ぶ余裕があるかどうか…。

今回、海ねこの棚に並べる本のテーマは
「時間があったら自分が読みたい本」。
五反田は男性客が多いので、
前回は、男性向けを意識して古い児童書も持っていった。
乗り物の絵本はちょろっと売れた。
かこさとしの絵本は、まったく売れず。
ということで、今回は、なんと。
どうした、海ねこ、飲みすぎて頭変になったの? と首をかしげられそうだが、
無謀にも黒っぽい本が多い。
おそらく、同じ方の蔵書だったと思われる文学や
私もぜひ読みたい古めの紀行ものに、
絵入り雑誌「子供と科学」、古い図鑑など。
売れないかもしれないが、まあ、いいです(いや、よくないな)。
たいてい、直前になってから
売れそう路線をあわてて追加するパターンだ。

「棚2本分ですか。
うちだったら、値つけは4時間ですね」と
S書店のOさんに言われてしまったのだが、
まったくどれほど時間がかかるのだろうと思うほど、
夜なべでしこしこ、値つけである。
本当は昼、倉庫で大半の値つけを済ます予定だったのだが、
体調不良(また飲みすぎです。ご心配なく)でへたり、
這うようにして発送・受注。
全集50冊というありがたいご注文をいただき、
すべてきちんと揃っているかどうか確かめたり。
「値つけ、どこまで進んだの?」と人から聞かれようものなら
うへーっ、と口ごもるしかない状況だったのだ。

ということで、夜半、
寒い廊下で値つけと相成りましたわけで。

戦前の女性誌付録を拾い読みして、
新婚家庭のための指導文を眺めたり。
ヤケまくり、薄汚れた本であっても、
装丁・花森安治、青山二郎だったり。
じっくり読みたいと思っていた
牧野信一がこんなところにと気づいたり。
おいおい、木曜、搬入なのに暢気すぎるじゃないですか。
値つけ、まだ半分ぐらいしか終わっていないじゃないですか。
あらあら、やる気あるんでしょうかー。
暢気すぎて、もう歌が出ちゃうよー。

そういえば、映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」の
撮影用に、昭和の児童文学全集をお探しの方からお声をかけていただいた。
こんなふうに古書のホコリにまみれ、
値つけにアップアップしているので、
時間的にちょっと、とお詫びしたところ、
五反田展の会場に足を運んでくださるという。
ご相談にのれるほど、実は詳しくないんですよ、とは言うまい言うまい。

以前にも、映画の小道具担当者からご注文をいただいたことがある。
時代背景にあうかどうか、
登場人物の設定にあった本であるかどうか、
カメラ映りがどうかなど、さまざまな条件があるようだった。
そのときは小道具担当さんが
監督はじめスタッフに相談しながら欲しいものが流動。
映画のスタッフも大変だなあと思ったのだった。
どの本にするか、なかなか決まらず、
しまいには「どれにするか決めました。
撮影が×月×日に決まりました。
最短コースで発送してください」とご依頼を受けた。
皆さんそれぞれ大変なんですから、
値つけが面倒だよー、なんて言っちゃ罰があたりますね。

それにしても、搬入日に軽自動車ですべて持っていけるのだろうか。
明日、値つけが終わった分だけでも五反田に運ばないといけない。
年末の渋滞を思うと、
「ドラえもん、どこでもドアーを出して」とお願いしたくなる。
駄文を書いている間にばんばん値つけすれば、と思いながら
気分転換に書いてみました。
まずいです、眠くなってきてしまいました。
試験前の高校生ですか、私は。

知人がいないため行くのが億劫だった会合。
が、社交辞令でなく、行ってよかったと思う。

「千野栄一先生を偲ぶ会」が
新宿・ライオンで開催された。

生前の先生にお目にかかることは果たせなかったため、
自分は「千野さん」と書かせていただく。
「君には教えていないので
先生と呼ばなくていいよ」と千野さんから言われた人の話も出ていた。
千野さんは、スラブ語の研究者として、大学名誉教授、
またチェコ贔屓の作家・エッセイスト・翻訳家として有名だが、
ご自分の研究ばかりでなく、
若手に何かを伝えることに全霊を向けていたようだ。
朝日カルチャーセンターで、語学の教室をずっと続けていらして、
教室後、新宿・ライオンでの飲み会が毎回、大盛況。
机上よりも、酒席こそ学びの場とばかり
杯を酌み交わし、語り合っていたのだという。
ゆかりの地、ライオンに40人ほどが集ったのだ。

顔ぶれは、東京外国語大学はじめ各大学教授、
カルチャーセンターの先生ほか
「教授」「先生」と呼ばれる人が多い。
絵本好きならだれもが知っているせなけいこさん、
内田莉莎子さんのご子息などもいらした。

驚いたことに、私まで受付で「先生ですか?」
「先生、御代は結構です」と言われかけたのだった。
なんのことやら。
あとでわかったのは、
千野さんの二人めの奥様であり、翻訳家でもある方に
似た雰囲気だったため、奥様と勘違いされたらしい。

司会進行役も大学教授である。
私の隣の席も大学教授。
なぜ自分がここにいるのかわからない。
そうは言っても来てしまったからには飲んで飲んで飲む。
ライオンのビールがまた旨いんですよ。

テーブルに同席した方が皆、優しかった。
まるで沖縄の居酒屋に行ったかのような優しいまなざしだ。
千野先生が今日の会に皆を集めてくれたのだと
だれもが意識していたのに違いない。

古本屋だと名乗ると、
一様に関心を示してくださる一方、
チェコ語の絵本を紹介しているサイトは
よくRとLを間違えて掲載しているのでどうかと思うなど
手厳しいことを言われ、ドキリとする。

スライドで千野さんの若き日の様子が次々に映し出される。
会場にいた人たちの若き日々の姿が
千野さんに寄り添って、ともに笑っている。

次々に、千野先生の思い出を語ろうと
自発的にスピーチする人が絶えない。
会場中がそのスピーチに熱心に耳を傾ける。
あれほどスピーチをきちんと聞く会は初めてだ。
千野さんの思い出を語る人とともに、
会場の皆も飲みながら、うなずいたり、笑ったり、泣いたり。
時間と思いを共有した。
生前、お目にかかったことがない私でさえ、
千野さんのお人柄を感じ、温かく包み込まれるかのようだ。

今、第一線でご活躍なさっている方が
名もなきころ焼き鳥屋に連れていってもらって
「なんの仕事でもできるんだから」と励まされた話。
お亡くなりになる直前まで枕元に原書が積まれていた話。
闘病生活の途中から耳が悪くなり、声が大きいため、
「階下で話そう」といわれて一緒に行ったとたん、
いつもの毒舌が始まり、びっくりした話。
「語学とは記述すること」と千野さんがよく口にしたという話。

せなさんは「チェコに行ってトゥルンカのアニメや絵本に目覚め、
せめてタイトルや小見出しが読みたいと思ったんです。
朝日カルチャーセンターで20年ほど先生の生徒でした。
チェコ語はともかく、(授業後のライオンで)ビールのほうが覚えました。
先生には違う世界を見せていただきました」と話していらした。

とある大学教授は、千野さんの思いを
今も生徒に教えていますと語っていた。

コリアンスクールに通うことになり、
それでもなじめず、チェコはじめ東欧に憧れて
心の支えとしていたという女性は
先生が「分け隔てなく接してくださって。
生前、お礼をいえなかったのが心残りです」と涙していた。

先生に生前お会いしたことがない人として紹介されていたのは、
プラハで村上春樹がカフカ賞を受賞したとき通訳だった男性。

千野さんと皆さんで歌ったのだろう。
チェコ語の曲を皆で合唱する。
千野さんが同じ会場のどこかで歌っているような気がした。

スピーチする人が一様に、
入院先の千野さんから手紙をもらって励まされたと口にしていた。
そんな生き方ができる人がいたとは、頭を垂れる思いである。
死して5年、千野さんは皆の心に生きていた。

今回、連絡が行き届かない人も多々あり、
次回はできれば参加希望者がもっと来やすいよう
考えたいそうだ。
千野さんの望みどおりだろう。

なってるハウスのふちがみとふなと、行きたかったけれども
残念でした。こんなところで失礼しますが、
Nさん、伝言、確かに聞きました。ありがとうございました。

残念。西部の優良書市、行けなかった。
経営員の皆さんがご熱心に運営している様子なので、
どんな本が出品されているのか、
ぜひ見に行きたかったのだが…。

新着本を9点アップして、運転。
月曜と金曜に買った大量の本をとりに神保町へ。
首都高速は渋滞。
甲州街道から靖国通りを経るルートをとるが、
いつもより時間がかかる。
BGMは「はじめてのやのあきこ」。
眠気ざましも兼ね、思いきり歌いながら運転する。

ようやく古書会館にたどりつくが、
月曜の中央市会ほか出品の車が多数。
駐車スペースがなかなかなくて、
さまざまな方に声をかけたり、頭を下げたりしながら
なんとかかんとか奥のほうに駐車。

どうせ時間をかけて行くなら、
荷物をとりにいくばかりでなく、
出品用の本も持っていくべし、と。
運んできた本を出品。

書肆ひぐらしさんが出品準備をしながら
他店さんと
「古本屋って、労働時間が長いですよねー」と
笑いながら話している。

カーゴ半分以上、山積みの本と格闘していたら
ひぐらしさんが「海ねこさん、手伝ってあげますよー」
と、なんでもないことのように声をかけてくださった。
そういえば、「本の散歩展」のあと
不慣れで大型本を束ねるのに四苦八苦していた私に
「バイトくん、海ねこさん手伝ってあげて」と
声をかけてくださったのも、ひぐらしさんである。
優しいというのもあるだろうが、
おそらく見るに見かねてだったのだろう。
要領が悪くて、満足に本も縛れない私が
のろのろ片付けていて見ていられなかった、のだろう。

今日も、軽自動車に大量の本をどこまで積み込めるか不安だったのだが、
ひぐらしさんは、なんの迷いもなく、
慣れた手つきで積み込んでいった。
速い速い。
「出品に来る人がいるから、
早く行ったほうがいいよ。
出ていくとき、皆さんにすみませーんって言ってね」と。
まさにそうだった。
「本を積むときはこっちの向きね。
短時間だったらいいけど、
長い時間、本を積むなら、この向きだと本が壊れるから」と
手を動かすことをとめず、指導までしてくれながら。
自分ひとりだったら、狭い車内、それも下が平らでないところに
一体どうしたら積み込めるものか、ああでもないこうでもないと
何度もやり直すに違いなかった。
ひぐらしさんの鮮やかな手つき。
さすが、長年おやりになっている人は違う。
プロだよなあ、と、どんくさく素人くさい目で
まぶしく見上げてしまう。
お力をお借りしたからお世辞で書いたわけではない。
ひぐらしさん、飲んでいるだけでもないし、
文章がうまいだけでもない人だったのだ。

車がごちゃごちゃと駐車され、
ジグザグしながらバックしていかないと
会館の荷捌き場から出ることができない。
満足にハンドルの切り返しもできない私に
やはり見るに見かねて
「はい、ハンドルもとに戻して」
「いったん前に出て、こっちの向きに」
「はいー、そのまままっすぐまっすぐ」など
左右前後、何人もで誘導してくださった方々、
すみませんでした&ありがとうございました。

本日の労働時間 14時間強+さらに更新中
本日の運転時間 160分
本日の梱包重量 68キロ

石田書房さんも、西秋さんも
話を聞けば聞くほど楽しくも大変そうだし、
比較してみたら私などラクラクチンチンのはずなのだが、
それでもぐったりですよ。背筋にきましたよ。ずっしり。

でも、労働は気持ちがいいです。
よけいなことを考えてぐだぐだしているより、ずっと健康的?
もう一仕事して、ビール飲んで寝ちゃおう。

明日は、正真正銘だれひとり知人がいない会合だ。
出席の返事を出してしまったことを悔やみつつ、
行かなくちゃいけないだろうなあと案じつつ。
だれも話す相手がいなかったら、
時間いっぱい、ひたすらビールでも飲んでこよう。
というわけで、今日も明日も、
五反田展の準備が進みません。

今月はすでに、市場でたっぷり買った。
買取でも良い本を多数お譲りいただいた。
年末年始、市場が休みになっても更新には困らないぐらい
倉庫に本が充実しつつある。
裏腹に、懐具合はかなりきつくなっている。

今日は、明治古典会。
良いものが大変高く、こちらの財布の中身を
どんどんどんどん持っていく恐ろしくも魅力的な市場である。
今日は売る本を出品するだけのつもりで足を運んだのだった。
出品だけして、さらっと何が出ているのか眺めて
さっと帰るつもりだった。
まあ、五反田展向けのものがあれば買っておこう、ぐらいの気持ちだった。

ところがところが。なんですか、これは。
行ってみたら、とんでもなかった。
本日の出品量と人の多さといったら…。

4階の開札はふだん13時半からのはずだが、
13時50分からにずれこんだほどである。
本の量がとんでもなく多かったため、経営員の方々も大忙し。
「今日は夜10時ごろまでかかるかも」と、とある経営員が嘆息していた。

なぜ、それほど出品量が多かったのかというと、
とあるお宅のもとから古書店を経由して
大量に本が売られたから、らしい。

ヤネチェク、ヤーノシュなど絵本の大きな束が出ていた。
また、児童書の束もあちらこちらに
にょきにょきとそびえ立っている。
「そびえ立つ」という言葉が大げさでないほどの量だ。
海ねこ好みの創元社・世界少年少女文学全集もあるが、
何巻かずつ、あちらとこちらに分かれて出品されていた。
運よく入手できたとしても、倉庫がふさがり、
整理が容易でないのは目に見えていた。
「こんないっぱい買っても、あとから大変ですよねえ」と
お気楽に他店さんにつぶやく私。

そこに悪魔の囁き、ならぬ、天使の囁きをもたらしたのは
N堂さんだ。
N堂さんの囁きは耳をよく開いて聞くべし。
「児童書、買っといたほうがいいよ。
これ、Kさんの旧蔵書だから。
番号(注:出品店がどこかわかりにくいよう、
数字でやりとりする仕組み)見といたほうがいいよ」

えーっ。あのKさんの蔵書ですかー!
ひえーーっ。
お名前を出していいのかどうか判断がつかないので伏せておく。
2005年7月に大変惜しまれつつお亡くなりになった著名人
(Kさんとしておく)の旧蔵書が大量、市場に出品されたのだった。
N堂さんがなぜそう判断したのか、
あとで聞きにいった。説明を聞いてなるほど、納得である。
N堂さんが市場に大量に出される本の、
どこをどのように観察しているか、知れば知るほど尊敬するばかり。

Kさんご自身の著書も含めて、
さまざまなジャンルの本が超・大量、出品されていたのだった。
さながら、Kさんの書斎が神保町にやってきたかのようだ。

そうとなったら、
児童書は児童書でも、ちょっと意味合いが違ってくる。
Kさんがどのような児童書を買い求め、
あるいは所持し続け、
どのようにお読みだったのか。
旧蔵書というのは、私からすると、
その人自身といっても過言ではない気がする。
Kさんがその場にいるような、
Kさんの存在がそこにあるような。
衿を正すような思いで本の山を眺める。

市場には、有名無名を問わず、
さまざまな方の思いがこもった旧蔵書が出品される。
自分が死んだら蔵書がどうなるのか、
はっきり思い浮かべることができるようになった。
死は、どの人にも公平に訪れ、
生前抱え持っていた希少本であれ何であれ、
こうしてまた古書店、そして市場を経て古書店に渡り、
さらに、さまざまな人のもとへと渡っていくのだ。

それにしても、Kさんの旧蔵書である。
今この場から各方面に散らばってしまうのだと思うと、
すべて写真撮影して記録しておきたいほどだ。
無常も感じるが、それでも、
そのような歴史的瞬間(?)に立ち会うことができた。
市場に通い始めてまだ1年強の身には、
ただもう興奮するばかり。

他店の方々はどのような思いだったのだろうか。
何年もプロとして仕事をし続けている人は、
もっと冷静な視点に違いない。
頭に血がのぼっていたのは私だけかもしれない。

と思ったが、やはりあちらこちらに
さまざまな方の署名本が混ざっていることもあり、
古書としての価値が高いと皆さん、踏んでいるのだろう。
値段はどんどん吊上がる一方である。

児童書の束には漏らさず、とにかく札を入れていく。
貯金がなくなるーと、もうひとりの自分が悲鳴をあげるが、
そんなことより今は買わねばと思って入札する。

さらにどんどん封筒の中に札が増えていく。
何店もで値段を突き上げあい、封筒がふくらみ、ぱんぱんである。
会館内が異様に熱いのが、暖房のせいか、
人の熱気のせいか、よくわからない。

通常であれば、同じ本でも3分の1から4分の1、
いやもっと安く買えると思うのだが、
今日ばかりはそれでは済みそうにない。

市場は、金がものをいう世界である。
お金を出さないと買えないのである。
市場においては、お金を出す
=買う意志がどれぐらい強いかの証、
他店への意思表示、宣言ともいえる。
いつも負けてばかりだけれど、
どうしても欲しいものは欲しいのです。

いったん入札したものの、
値段をつけかえて札を入れ直しにいく。
すでに開封された同類の束がいくらで落札されたか
確かめたうえで、さらに値段を高くして入札し直す。
「改め」「再改め」「再再改め」と値段を高くしては
ぐるぐるぐるぐる。
行ったり来たり、うろうろうろうろ。
万歩計をつけておけばよかった。
ほかの店も結構、改め、再改め、と
値段を付け直していたのだと、あとでわかった。

結果。
Kさんの絵本や児童書は、私の見ていたところ、
みわ書房さん、玉晴(玉、の点はなし)さん、月の輪書林さん、
そして、海ねこに渡ったのだった。
玉晴さんが落札したものには僅差で負け、残念がっていたところ、
玉晴さんのご好意で、
関心のあるものだけ抜いて残りを譲ってくださることになった。
玉晴さん、ありがとうございます!

欲しいと思ったのは、今回、児童書ばかりではない。
福永武彦のKさんあて署名本5冊を見た瞬間、
何がなんでも欲しいと思った。
福永武彦は、自分が学生時代、貪り読んでいた作家であり、
向こう見ずにも卒論のテーマとさせていただいたお方である。
福永武彦の署名本は市場でしばしば見るが、今まで入札したことがなかった。
が、Kさんあての署名本である。
「署名本」ということは、福永武彦とKさんが間違いなく手にとったものと考えてよいだろう。
福永武彦がKさんにどのような気持ちで進呈し、
Kさんが福永武彦から受け取って何を思ったのか、今となっては知る由もない。
それでも、どんなことを感じただろう。せめて自分も手にして眺めたくなってしまった。
どうしても欲しいときは、ありえないような高値を
上値(1万円以上を入札する場合、上値・中値・下値の3通り、
値段を書くことができる)とする(「鬼札」とも呼ばれている)。
結果、中値でありがたくも落札することができた。

ほかにも欲しいものがたくさんあったのだが、
他店にまったく及ばず。
買えなかったが、
支払いのことを思うと胸を撫で下ろしたくもなった。

それにしても、ただもう入札することにばかり夢中だった。
開札が進み、他店のもとに本が渡ってしまえば、入手の道は絶たれてしまう。
どんなに悔やんでも、後の祭りなのである。
買えるか買えないかーー買いたいーー自分にはそれがすべてだった。
あとで、買った本をどうしたらよいのか、
ほとんど考える余裕すらなかった。

神保町のN書店さんもKさんの旧蔵書を落札していたので、
「これ、どうするんですか」と聞いてみたところ、
売るあてがあって買ったのだとわかった。
そうだろうなあ。
何も考えず、衝動に突き動かされて買っているのは
私だけかもしれない…。
見えない何かに揺さぶられ、
自分の中の何かに火をつけられた感じ。
出品した本はありがたくも他店さんに買っていただくことができたのだが、
落札した本代のほうがずっとずっと上回っていた。
組合って、市場って、本当に本当に怖い。
怖いけれど、面白すぎる。

ということで、明日にでも、
大量の本をとりに神保町に行かないといけない。
軽自動車に一度に積み込めるかどうかわからないぐらいの量。
来週は支払いにつぐ支払いである。
Kさんの旧蔵・児童書をどうするか、これから考えていかないといけない。
少なくとも、これだけは言える。
Kさんの本ーーKさんの思いを適当に散らしてしまってはいけない。

働かないといけない。
それなのに車がない。連れが乗っていってしまって注文本を倉庫にとりにいけない。
55冊の全集をお待ちのお客様に発送しなければ。
が、体力が残っていない。
すぐお送りできなくて申し訳ないが、週末にじっくり丁寧に梱包しようと思う。

長々とお付き合いいただき、本当にすみません。
手の内を明かしすぎではないかと某・Kさんにご指摘いただき、
気にかけております。
ただ、古書がこんなふうにやりとりされているという
古書店どうしの熱気が伝わりましたら幸いです。
古書店は元気です。古書をよろしくお願いします!
お断りしておきますが、私というひとりの人間が見た視点であり、
他店の方が皆さん同様というわけではありません。
誤解のなきようお願いします。
今日はそんなところです。仕事します。
あー、五反田展の準備、どうすればいいんだろう。

仕事を終えてから、池ノ上・ボブテイルへ。
ふちがみとふなと、関東4日間ライブの初日。

ふちがみとふなとライブへ行くのは、
コクテイル、吉祥寺・マンダラ2についで3度目だ。

ボブテイル、ワインがおいしい。
ビールもうまい。チーズも各種ハイレベル。
ハコの大きさといい、暗さといい、ひじょうに居心地がよい。
ほぼ最前列に座れたため、
ウッドベースは生音で届いてくる。いいねえ、こういうの。

休憩をはさんでの二部構成だ。
バートン・クレーンを1曲、新曲も1曲。
渕上純子さんの歌とMCに、しばし浮世を忘れる。
声を張り上げて弾けるように歌う渕上さんも、
小声で囁くように歌う渕上さんも、どれもこれも好き。
船戸博史さんがウッドベースの弦をはじく
右手に至近距離から見惚れる。
節くれだったイカつい指が縦横無尽に奏でる音は
あるときは優しく、あるときは気骨があり。
お二人の演奏は、あるとき“こうかな”と思って聴いていると、
次に聴きにいったとき“あれ、前に聴いた感じとぜんぜん違う”と
予感を裏切られる面白みに満ちている。

休憩時間、赤いベレー帽に赤いニット姿で
素敵にキメた尾崎(石丸)澄子さんがやってきてくださる。
「知り合いがいないかと思った」と。
知り合いだなんて…。モッタイのうございます。
シリアイ、シリアイ…。甘い響きに、そっと舞い上がる私。
(澄子さん、勝手にすみません)

終了後、オーラを消した渕上さん、船戸さん、
澄子さんと京都のお好み焼きの話など。
楽しいひとときでございました。
渕上さんが、どんとへの気持ちを語っていたことに
興味をひかれる。
いまや、私の中で、友部正人、どんと、
フィッシュマンズ、ふちがみとふなと、くるり、といったラインに
勝手に共通項を感じている。
敬愛するミュージシャンらと一緒の電車で途中まで帰るひととき、
ああ、憧れの人たちと一緒にいるよーと。
またひとり、ひそかに舞い上がっておりました。

澄子さん、明日、楽しい一日になりますように。

珍しく早朝から目が覚める。
天気予報のおねえさんが
晴れから雨に変わると言っている。
ウソじゃないの? と思うほど、まばゆい青空。

倉庫に本をとりにいき、
渋滞の中、眠気を振り払うべくどうにか運転して五反田へ。
「五反田展」が22・23日にあるので
何かしらよいものを安く買えないかと願って。

ところが、そう甘いものではなく、
気づいてみたら他店が声をあげないものばかり買ったような気がする。
つまり、他店が買わないような本
=あまり人気がない本ばかり買ったような…。
絵本などはともかく、
古書展を意識して買った、いわゆる黒っぽい本はカンだけが頼り。
このカン、かなりいい加減そうなのだ。
行くたびに、他店の皆さん、本当に本をよく知っているなあ、
ちょうどいい値段できちんと買うなあと感心ばかりしている。
キャリアが違うものなあ、仕方ないなあ、と
それだけで片付けられないような気もして。

振り手まで結構距離があるので、
中身を見られないのは普通で、本の表紙さえよく見えないことも多いのだ。
やはり振り市は、本をよく知っていないと
ここぞというタイミングで声を出せないなあと思う。
経験が浅い人間には結構、難しいですよ。
「毎週来ないとダメだね」と北上さんに言われたけれども、
中央市会、明治古典会と、さらに五反田も行っていたら
すぐさま破産だしなあ。

それでも、結構買った。

チェゴヤで腹を満たしてから、
山のように買った本を整理して、
値つけして束ねていく。
軽自動車に積める量は限られているので
運ぶものをこれ以上増やせない。
できるだけ自宅や倉庫に持ち帰らず
南部古書会館で値つけして、
南部古書会館のロッカーにしまいたいのだ。
順序を考えながらきちんとロッカーにしまっていけば、
五反田展の前日に、地下ロッカーから順番に出して
エレベーターで2階に運ぶだけで終わり、とシンプルにいく。

髪の長い男性がぶらっと入ってきた。
だれかと思ったら、古書 百年さんだった。
いつもポニーテールのように髪をゆわえているのだが、
今日はロン毛で、英国のバンドマンか歌舞伎役者? みたい。
「1月5日にバーをやりますんで来てください」と笑顔を残して去っていった。
いいなあ、1日バーって楽しそうだなあ。
私もやってみたいなあ。
でも、私がやったら主催者側でありながら、
いのいちばんに飲みすぎて酔ってしまいそうだ。

まだ五反田展の当日まで少し日にちがあるが、
これじゃあまり値段のつけられるものがないなあ、
均一用の本ばかりだなあ、
2階に並べられる本が足りないかもなあ、
どうしようかなあ、倉庫から何をどう持ってこようかと考えながら作業する。
BGMは、換気扇の音と、南部経営員の皆のおしゃべりだ。
1冊1冊、いくらつけたらいいのか考え考えなので、
とても時間がかかる。
不慣れなので、面倒だし、すぐに疲れてしまう。
重たい本の束をしばったり、入れ替えたり、
背筋にすぐきいてくる。

中川書房・サトシさんに効率よく値つけをするための
コツを教えてもらう。
まずは、値段を書いた札を本の間にはさんでいって、
一通り済んでから、あとは糊付け作業に集中したほうが
効率がよいという話は、目から鱗だった。
「糊付けしながら1冊1冊、貼っているの?
それじゃ、糊のキャップをとったりつけたりの
手間だけでもだいぶかかるでしょう。
うちはバイトさんに手伝ってもらって
二人がかりでじゃんじゃんやるときもあるよ」と言われる。
中川書房は、はじめから値札紙に値段を
何通りか印刷したものを用意しているという手際のよさだ。

振り市で買ったものにしても、
自分が本当にひよっこのよう。情けなくなってくる。

雨もあがったし、疲れたし、もう帰ることにしよう。
帰りの車は、今日の振り市と、
さらに先日の入札市で買った本でずっしり。
立ち寄りたいところもあるのだが、
以前、本の重みで突然、後ろの扉が開いてしまい
あわや事故という思いをしたので、大事をとって直帰。
重すぎて、バックするときハンドルが重たいほどだ。

冬のしおりの不在配達記録(居ぬさん、明日にでも受け取りますね。感謝!)などとともに
1枚のハガキが届いていた。
なんと、警視庁遺失物センターから届いた
「取得物通知」のハガキだった!

先日、財布をなくしたことをブログに書いてはみたものの、
翌日、読み返したらあまりにも情けなくて、
店として信用問題にかかわると思い、削除した。
ところが、短い時間にご覧いただいた方から心配していただき、
すみません、旅猫さん。ご心配ありがとうでした。
その財布がどうやら出てきたらしいんですよ。
届けて書類を書いたりって面倒だと思うのに、
その面倒を厭わない人がいたらしい。
ありがたいことです。
日本人もまだまだ捨てたもんじゃないですねえ。
人に親切にしてもらうと、自分も人に親切にしたくなるなあ。
明日、ふちがみとふなとのライブに行くので、
その前にでもとりにいってみよう。

古書組合の機関誌「古書月報」最新号が届いていた。
古書いとうさん、有馬浩一さん、狩野俊さん、西村文生堂さん、
内堀弘さん、うさぎ書林さん…
名前の列挙が追いつかないぐらい、書き手が凄腕揃い。
面白くてワクワク読む。
ひぐらしさん、飲んでいる姿と
あわあわと物を探している姿ばかりが目に浮かぶが、
文章、本当ーにいいですよねえ。

「へんですねぇ へんですねぇ」(今江祥智・長新太 72年)
「たことせんちょう」(トミー・ウンゲラー 66年)など
にまにましながらちょっと眺める。
だけど、持ち帰った本すべて見る余裕がない。眠い。
お客さまー、発送は明日しますので、許してくださいませー。
もう一仕事したら眠ってしまうかも。

海外在住の友人Mの元・夫から
「Mの借金の取立てが自分のところに来た」と
連絡があったらしい。
どうしよう、とMを共通の友人とするNちゃんからメールがあった。
つらそうなあの人もいる。この人もいる。
あまり力になれてないよね、ごめんねー、と思いながら、
睡魔にひきずられそうな…。

目標ーー古本屋で食べていけるようになること。

身近な人から言われた言葉に火をつけられた。
その人は、私が親ゆずりの負けず嫌いであることを
知ってか知らずなのか。
ちなみに、ここでいう「負けず嫌い」とは、
他人に対してではなく、自分の中で
思い通りにならないことに対して、なのだが。

古本屋として食べていけるように…。
どのぐらいかかるかわからないが、
自分の中でのテーマとして掲げていこうと思う。

海ねこはほんわかあったか路線なので心慰められると
お客様からありがたいお言葉をいただくのですが、
それとは別の裏テーマってことで。
表の顔は、これまでどおりですし、
ぎすぎすしないでひょいひょいーっといきたいです。
ただ、もっとどうにかしていかないとと、
はたと気づいたまでです。今更ながら。

これまでは何をやりたいのか模索状態だったのかも。
お客様、周囲の方々のおかげで
少しずつ見つかりつつあるような気もするので、第一段階はこれでOK。
これからはプラス・アルファー
きちんと店を持続させている人をよく見て、
アドバイスにもっと耳を傾けるようにしようと思う。

そうそう、のんちゃんの杉野書店日記に書いていただいたのですが
のんちゃんさんの「マイミク」に加えていただきました。
自慢できるぐらい私の「マイミク」は少ない(そのかわり厳選)うえ、
自分は何も書いていませんが、更新される日記を読むのは好きです。
コメントはほとんど書きそうにありませんので
マイミクとしてはイマイチだと思いますが、
拝見するのを楽しみにしています。
才媛であっても、それを欠片もひけらかすことなく、
人ににこやかな笑顔で接するのんちゃんさんは素敵です。
これからもよろしくお願いいたします。

ピノ・ノワールを飲みながら
録画しておいた「硫黄島 戦場の郵便配達」(フジテレビ)を見る。

その前にシカゴで行われたU2ライブ、
報道ステーション・渡辺謙を見た。

フジテレビのドラマは
正直、どれほど特殊効果がちゃちいものか笑ってやろうかと思って
見てみたのだった。
連れ合いが戦争讃美の色があるのではないかと言うので
そうかもしれないと「確かめてやる!」という気持ちで見てみたのだが。

低予算をカバーすべく(?)、俳優のアップばかりを
これでもかこれでもかと至近距離から撮影していたため、
かえって切々たるニュアンスが伝わってきた。

市丸利之助という人と、彼を敬愛し、ついていった若人たちが描かれていた。
イデオロギー云々と関係なく、
ただもう、敬愛する上司、親しい友人、愛する家族、愛する人のために、
というか、それ以外、選択肢がない状況下で
突き進むしかなかった言行が描かれていた。

市丸の「戦闘機乗りの真価は、
戦闘機を失ったときに問われる」という言葉が心に残った。

市丸の実在のお嬢さん三人、実写で登場。
戦場から家族に届いた手紙の実写が沁みてくる。
フィクションの間に挿入される家族の証言。
「この手紙を支えに生きてきたんです」という言葉に慟哭。
人の文章には言霊が宿っていると常々感じている。
極限下にあったであろう人の手紙とは
一体どんなものだったのだろう。
それがまた「庭の木は今年どんなでしょう」など
平穏無事だった日常を思う文面だったりするのだ。

なんといいますか。
硫黄島の元島民であった宮川典男さんに
今の硫黄島映画ブームを見てほしかったですよ。
私の感想は、そこに尽きます。
今、映画で話題になっている硫黄島は
もとから荒れ果てた戦場だったわけではなかったのです。
沖縄から新天地を求めて移住してくる人がいるほど豊かな地であり、
集落があり、元島民がいたんですよ。

恒例行事は、島の若者たちが参加しての相撲大会。
会場である神社への参道には
子供たちが書いた絵を灯篭仕立てにしたものが飾られ、
それはにぎやかな光景だったそうです。
元島民が普通に暮らしていたんですよ。
今の私たちと同じように、退屈したり、
笑ったり、ときに孤独を噛み締めたり、人に恋したり、
将来に夢を抱いたりしながら暮らしていたんですよ。
その人たちの暮らし、歴史、思いはどこにいっちゃんだろうね。
ということを、もっと突き詰めていかないと。
典男さんは今の日本、これからの日本がどうなるのだろうかと
憂うる人でありました。

南部古書会館の入札市に行った。
このところ、中央市会、明治古典会で買いすぎたため、
南部の振り市へ行くゆとりがなかった。
久々、南部の方々にお目にかかれて楽しい。

きゃあ。天誠書林の天誠さんだわー。
しばらく入院なさっていたようだったが、
「戻ってきました」と満面の笑顔でおっしゃっていただく。
お元気そう。
変わらぬダンディー&チャーミングっぷりに
「よかったー。うれしいです」とこちらまでにこにこしてしまう。
お酒はまだ、タバコはやめました、とのこと。

揚羽堂さんに「携帯、出てきてよかったですね。
ブログ見ましたー。
私も財布なくしちゃってー。出てこないよー。
もうダメかな。出てこないかもね」と言うと
「そうですねー。ダメかもしれないですねー。
でも、そのうち月の輪さんの目録に載るかもしれないですよ」と…。
相変わらず揚羽さんはぶっとんでいる。
載せられるものなら載せていただきたいものだ。
もっともそんなもの、買うのは私だけに決まっているのだが。

いつも一生懸命&素敵なブンキ君とも
久々にお目にかかった。
「五反田展の目録がお客さんに届くの、いつからかな。
申し込みがまったくなかったらどうしよう!」とボヤいてみる。
売り上げが伸びないと困るというつもりで言ったのだが
「自分で申し込んだことにしちゃえばいいですよー。
適当に名前書いちゃえば」
と爽やかな笑顔で返された。
だれとは書かないが、そうやっている人がいるらしい。
私もやるかな。
催事中、抽選の結果をお聞きになるお客様にすぐお伝えできるよう
“閻魔帳”なるものが用意され、
各店どうし、応募状況が一目でわかるようになっているのだ。
書き込みが少ないと恥ずかしいんですよね。

元事業部長さんからは
「あの後、どうしたの」とお咎めの言葉。
は! しまった! 思い出した。
以前、悩みがあって困り果てたとき、
だれに相談すればいいのかと。
ふと思いついてIさんに電話して
アドバイスを請うたのだった。
親身に助言をいただいたのに、
そのあと梨のつぶてにしていた私…。
「ビックリしたよ、電話も来ないから。
そういうやつだと思ったよ」と言われてしまった。
Iさん、本当に本当にごめんなさい。
事態が急展開して、ご報告する余裕すらなかったので、
などと言い訳すまい。
反省します。猛反省します。挽回します。

「五反田展、出るんだってね」と
ちょっとうれしそうに言っていただき救われたような気がした。
「うれしそうに」というのは私の主観であり、
本当のところはそうでもないかもしれないのだが、
楽観的に決め付けさせていただきます。

「五反田展、出るんだって? 僕、当番だから」
と北上さんからもおっしゃっていただき、
ちょっと優しくしていただく。
「今日、よさそうなのたくさん落札したねえ」と
珍しく褒めていただいたかと思ったら、
「洋書の児童書、なんで落とさなかったの。
あっちのほうがよかったのになあ」と流浪堂さんが
落札した束を指差されたのには、がくっ。

さて、本日、久々に南部に足を運んだいちばんの理由は
うさぎ書林さんの出品に関心があったから。
先日、資料会では高くて落札できなかったのと同じ絵雑誌を
おかげさまで、運よく入手することができた。
それもこれも、うさぎ書林さんがあちらこちらに
買取にいってくださっているから、と感謝する。
ほかにもトッパンの絵物語、古めの岩波子どもの本、
古いトミー・ウンゲラーや長新太入りの束など
絵本、児童書関連を5件落札。
児童書1本は五反田展向けのつもり。ほかは海ねこ用。

「五反田古書展」の目録も出来上がってきた。
新たに参加のうさぎさんが頑張るのは予想どおりだったが、
揚羽さんが目録作りにかなり工夫を凝らしていた。
うちは今回、準備不足だったため苦戦しそうな予感
(はずれてほしいぞ、この予感)。
苦戦しそうなら、当日どうにかしなくちゃ。
目録の顔ぶれを見ていたら、
ようやく少しずつやる気が起きてきた。

冷たい雨の中、西部古書会館の「杉並古書展」へも足を伸ばす。
西部は本当に安いですねえ(明日10日17時までやってますよ!)。
西部は良い本を安く出さないとダメだそうで
出品する側にはかなり試練だと聞いたことがある。
8冊購入したが、もっとも高かったのが800円、その次が500円。
ほかは、それぞれ150円~350円ですよ。
会館内に陳列された本だが、表の均一かと錯覚するほど。
自分が客の側になってみると気づくが、
本を手にとって「二千円」だとかなり高いと思ってしまう。
「千円」でも高いと思うのだ。
本の散歩展に出品したとき、
なぜこの本がこの値段で売れないのだろうと
首をかしげたものだが、
なるほど、とヒントをもらったような気がした。

これほどウダウダ書いて
読んでいただくのが申し訳ないと思ってしまうのだが。
自分もいつも読んでいるブログが更新されないと
さびしいので、ウダウダながらも書いてみました。

南部の入札市に行っても
外部のものがどこまで手伝ってよいのか
出すぎたマネをしていいものかどうか遠慮があるため、
せめて宣伝で手伝わせていただきます。
皆様、よろしくお願いします。
↓顔ぶれ、すごいでしょ(当店のぞく)。
個人的には、打ち上げが楽しみ。それまでぐわんばろう。

12月22日(金曜)23日(土曜)
「五反田古書展」参加店 一覧(目録順)
古書窟 揚羽堂
北上書房
古書わらべ
古本 うさぎ書林
古書 一路
文紀堂書店
遠藤書店
石黒書店
古書 いとう
飯島書店
ひと葉書房
小川書店
朝文堂書店
アンデス書房
なないろ文庫ふしぎ堂
澤口書店
二遊館書店
明理書店
古本 海ねこ
西村文生堂
進歩堂書店
月の輪書林

資料会の大市に大変なものが出品され、
テレビの取材がきている。
硫黄島関連の資料が出ていると聞きつけ、
必死で会館に電話。
知人に入札してほしいと頼み込んでいた。

↑すべて、夢の中での話。
はっとして目が覚めてしまう。

寝不足。
今日は案外あたたかそう。

まだ、やるべき仕事が終わらない。
できれば、開封前に少しでも見にいけたらいいのだが。
市場は私を狂わせる。冷静にいきます。

沼辺信一さんが映画「父親たちの星条旗」について
書いた文章、そうそう、そういうことだと思った。
沼辺さんの妹さんともお話してみたくなる。
映画「太陽」、見にいきたい。

MOE

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12月3日発売の雑誌「MOE」でちょこっとご紹介いただきました
(「本当にほしい絵本と出会えるホームページ大図鑑」)。
ものすごいお店の中に混ぜていただいて恐縮しています。
だから頑張るというのもおかしな話ですが、
買取で良い本をお譲りいただきましたので近々にアップします。
お待ちくださいー。

薄曇

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仕事がひとつ、思いのほかスムーズに進んだ。
よっしゃー、一休み。
と思って、ブログ散歩など。

昨晩、Mixiに綴られた知人の日記を
過去に遡ってさーっと読んだのだが。

ふと思いついて、自分の過去ブログを適当に
拾い読みしてみた。

知人も書いていたが、確かに
ちょっと前のことでも読み返してみると、
まるで他人のことのようだな。
自分のことであって、自分のことでないような。

気づいたのは、イニシャルで名前を書くと
自分でもこれ、だれだっけ? と思い出せないという事実。

名前をうかつにあげられても迷惑なのではないかと
極力、控えてきたつもりだったが、
「Kさん」「Nさん」とイニシャルで書くと
誰だったっけと書いた本人さえ思い出せないことに
愕然としてしまった。ほんの数か月前のことなのに。
大げさにいえば、小さな死は日常と隣り合わせだなと。
飲みすぎで、脳細胞がどんどん死んでいるのだろうか。
脳の構造上、必要な情報以外はどんどん消去していくのだろうか。
それはそれで、人にとっても脳にとっても必要なことなんだろう。
ちょっとモッタイなくないだろうか。
なんて思うのは、自分だけだろうけれど。

今度から、名前を書いてもいいかなと思ったときは
書くようにしようか。
だけど、書かれるのがイヤで、
私に話しかけてくれる人が減ってしまったらどうしよう。
(↑自意識過剰)
Iさん(南部の偉い人。尊敬してるんですが)みたいに
「今の、ブログに書くんだろう」なんて
いちいち言われたら何も話せなくなっちまう。
揚羽さんは凄いわ。
たくましいわ。凄い凄いと思いながら更新を楽しみにしている。

さあさ、仕事仕事。
ぱぱっとやって、できれば新着本にかかりたい。
できれば明日、資料会の大市に行きたい。
資料会に行けるかどうかは
無理かな、どうかなの瀬戸際ぐらい。
なんでもものすごい出品量らしい。
行けば、きっと何かしらと出会えると思うのだ。
神保町に店があったら、さっと見に行けるのにな。
遠い三鷹市(調布寄り)から指をくわえて耐えるのか。
しかし、行ってもなあ。最低入札単位1万円からでしょう。
目の前に欲しいものがあったら絶対、入札したくなるだろうし。
買取の支払い、そして、先週の明治古典会の支払いがあるからなあ。
海ねこの不要本もそろそろ
まとめて市場に売りにいかないとまずいかもしれない。

来週からは五反田展の準備だ。
五反田のロッカーに積んだままの本を
南部に出品して、まずはロッカーをあけないと。
で、自店倉庫にある本をどんどん値つけして
南部ロッカーに運びこまないと。

こんなこと書いている間に仕事しなさいー、自分。さいなら。

「満目蕭條ーー寒い季節がやって来た。
さういふ中で、町へ来る冬の雨の音ほど、
このわたしの心を落ちつかせるものはない。
その音を聴くたびに、
わたしはいろいろなことを思ひ出す。
平素は殆ど忘れてゐたやうなことまで思ひ出す。
そして、その生を耐へる気になる」(「冬の雨」より)

「終日静座。心もさみしく慰めやうのない日に、
森元町の湯屋まで一風呂はひりに行って来た。
その帰りがけに、子供等の茶うけのためにと思つて、
蒸し芋を買つた」(「味」より)

以上、「雪の障子」(島崎藤村
月明会出版部 月明文庫 昭和17年)より。

こんな寒い晩、
古来から
どれほどの人がどれほどの孤独に耐え生き続けてきたのかと思うと、
気が遠くなるようだ。

それにしても、紙の書物が残されているから、
60年、いやもっと古い本でも手にとることができ、
いにしえの人が何を考えていたのか
手にとるように知ることができるわけで。
私たちの世代がブログに書き残している文章は
あと50年100年もしたら、
きっとどこにも残っていないのだろう。
古い写真集を見るとき、
ここに写っている人はだれひとりこの世にいないのだと思う。
あの感覚とちょっと似て、感傷的になったりして。

でもね、私は、孤独が好きなわけではないけれど、
ひとりで過ごすのも好きですよ。
エネルギーを使って
大勢の友達と上手に付き合える人を尊敬するけれど、
大勢の中にいるときの孤独もまたさびしいもので。
思いを分かち合える人が
自分以外にひとりでもふたりでもいればそれでいいとも思う。
なんて書いてみる晩。

大勢で飲むのも楽しいけど、
私はふたりで飲むのが好き。
多くても3人とか、せいぜい4人ー5人ぐらいで飲むのが好き。
忘年会に前ほどきちんと行かないのは、たぶんそのせいだろう。
古書組合の人それぞれとぱらぱら飲みにいくのは楽しいけれど、
「組織」の一員に組み込まれて
統一感のある動きをと迫られたとたん、逃げ腰になるやもしれぬ。
古書組合の人は皆ばらんばらんなところが好きなので。
まとめてくださっている人は大変だろう。ありがとうございます。

そういえば、朝日新聞の夕刊に
茨木のり子さんの遺稿40編がみつかった記事が出ていた。
手元に夕刊がないので曖昧な部分もあるが、
茨木さんが夫との愛について綴った詩をまとめて、
長年そっとしまいこんでいたらしい。
甥っ子さんがどうして発表しないのかと聞いたら
恥ずかしいから生きているうちは発表したくないと。
遺稿とともに出てきた木箱は、
茨木さんがときどき手を触れていたらしく
少しよごれた感じだったそう。
中には、ご主人の遺骨が何片か入っていたとのこと。
遺骨入りの木箱をさすっていたときの
茨木さんの孤独が伝わってくるようで胸をつかれた。

いずれにしても、ひとつのことをずっとやり続けたり、
ひとりの人を愛し続けたりするって、才能だと思う。

おだやかな天候。
ふらりと、どこか出掛けたくなります。

代々木上原・リラフーセット
(渋谷区上原1-36-12
電話 03-5738-5114)では
「冬のおくりもの展」を開催中。
11月25日(土)~12月23日(土)

参加者はクレイ作家のMamaruさん、手織りマフラーのTESSIMOさん、
同じく手織りマフラーのmimiisuさん。
そして、当店の題字、しおり、ほかさまざまなイラストやデザイン、製作などで
お世話になっている居ぬさん、ミワちん。
それぞれの作品が見事に調和して、クリスマスらしいディスプレイに。
即売ですので、気になる作家さんがいましたら、お早めに。

根津・竹久夢二美術館では12月24日(日曜)まで
「竹久夢二 音楽デザイン帖
~叙情のリズム、大正ロマンの調べ♪~展」。
弥生美術館で「竹中英太郎と妖しの挿し絵展
~エロティシズムとグロテスク・・・闇にきらめく艶美の世界~」展を
開催しています。
私もぜひ行きたい。さて、いつ行こう。

ちょっと先になりますが、12月10日(日曜)~16日(土曜)
上野公園内・東京都美術館(電話 03-3823-6921)にて
「第36回 純展」開催。
午前9時~午後4時(札止め 3時閉会)。
初日 午後1時より 最終日 午後2時。
買取でお世話になったお客様のお宅の
「猫犬と海をモチーフに」した絵が展示されるそうです。

あと、気になる映画「太陽」。
ロシア監督が昭和天皇を描いていて、公開があやぶまれたという作品です。
神と崇められ、戦争に翻弄された昭和天皇が、
終戦から一転して「人間宣言」へと至る苦悩と孤独を私的なタッチで描いたもの。
監督:アレクサンドル・ソク-ロフ
出演:イッセー尾形、ロバート・ドーソン、佐野史郎 ほか
調布キネマで8日(金曜)までモーニングショー。
10時15分から12時15分。
日曜日、行列ができていたそうです。朝早いけれど見たいな。

イベントの案内、私もいろいろな方の
ブログやメルマガを見て気づくことが多いので、
こちらでも何か気づいたら紹介したいと思います。
告知したいことがある方、ご連絡くださいね。

内堀弘さんの「ボン書店の幻」を読みながら神保町へ。
当店にとっては欲しいものがめったに買えない明治古典会。
ところが、1日ばかりはなぜか。
入札したものがどんどん買えて本人もびっくり。
要は高く入れすぎたようだ。またやってしまった。
「思っていたより高くなってラッキーだね」
と笑っている店の人の顔が目に浮かぶようだ。
しかも、欲しいものが多かったため12件落札。
落札件数だけは、神保町の店なみ?

支払額の合計を見て卒倒…。
最初で最後の花火という気分。
買い物依存症になっていないか、自分でも不安になる。
働かなくては。
海ねこが4周年を迎えられたらお祝いをしましょう。
大丈夫かね、本当に。
経済観念がどうも弱いようなので、
そういう面をきちんとやれる人のもとで
自由にやらせてもらえれば理想なのだが
(あるわけない、そんなうまい話)。

知人の古書店が開店間近。
わずかな時間ではあるが、手伝いをしにいく。
すこーしずつ、店らしくなっていくのを見るのは楽しい。
旅猫雑貨店にはちっとも手伝いにいけなくて申し訳なかったと思う。
というか、残念。行っていたら間違いなくおもしろかっただろうから。
帰ってから店のことをあれこれ。

2013年9月

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