友人のこと

昨夜、沖縄の島&海仲間数名で飲む。
何を話していても話題はどうしても先月亡くなった仲間のことになってしまう。
ここ数年は頻繁に会っていたわけでもなく、年に数度の飲み会で一緒になるくらいだったから
いまだ死んでしまったなどという感覚もなく「久しぶりー、飲もうよー」と普通に連絡が来るような気がしてしまう。

そんな彼女のことをちょっとだけメモっておくことにしようかなと。

↓(長文です)

1991年夏
会社の同じ部署に長期休暇になると沖縄の阿嘉島へ出かけ、海中の写真を撮るSさんがいた。
その水中写真を見せてもらい、こんな世界に自分も行くことができるのか、と思う。
「一度連れて行ってくださいよ」とお願いし沖縄へ初めて行ったのがこの年。
その時泊まった(そしてこれ以降数えきれないくらい泊まってる)のが民宿「川道」。
川道でヘルパー兼ダイビングスタッフとして働いていたのが彼女だった。
初の体験ダイビングの先生でもあった。
埼玉出身だが海が好き島が好きで八重山など離島を働きながら転々とし、
阿嘉島で働き始めて間もないころだったよう。
一応ダイビングのインストラクター資格は取っていたが、方向音痴とおっちょこちょいな性格のため、
水中でよく場所がわからなくなっていた。(なので彼女のガイドではあまり潜りたくなかった)。
おっしょこちょいではあるが明るくて彼女がいると宴会のテンションが数段あがった。
自分はあまり飲まないのに人には泡盛をいっぱいついで、濃い酒を飲ませてばかりいた。

1992年夏
翌年もSさんと沖縄へ。この年にも彼女は川道で働いていた。
季節労働者なのでお客さんの多い時だけ手伝っていたのだろう。この夏も一緒によく飲んだ。

この年の冬からだったろうか。
川道のオーナーが東京銀座のギャラリーを貸し切ってお客さんの水中写真展を何度か開催。
埼玉在住の彼女は裏方として雑用を引き受けスタッフとして手伝ってた。
これ以降、彼女を含め東京の川道つながりの方々と頻繁に飲むようになる。

そんな飲み会の中で彼女が地元埼玉上尾で神輿会に入っていることを知る。
三社とか鳥越とかのお祭りでも担いでいるらしい。
神輿、担いでみたい、と思った。上尾のお祭りに連れて行ってもらった。
なんだかわからないが楽しかった。気持ちよかった。こんな世界もあるんだな、と思った。
それから数年、その神輿の会に混ぜていただき、三社神輿も何度か担いだ。

また、やはり飲み会で彼女がトライアスロン(フル)を完走したときの写真も見せてくれた。
(トライアスロン同好会にも入っていたのだ、彼女は)。
こんな細っこくてフルトライアスロン完走したという姿にびっくりした。

昔話も聞いた。
一人娘で親のいうことを聞かず、ローラー族で原宿ホコ天でロックンロールを踊っていたとか
一人で山小屋に何日も泊まったとかとか。

その後、彼女は同級生だという人と結婚し、離婚し、沖縄に住みたいと計画したものの難しく、
でも海の近くに住みたいと逗子でアパートを借りて一人住んでいた。
その間、何度か阿嘉島でも遭遇したりもした。
台風で停電の夜、数名で夜通し蝋燭の灯りだけで汗だくで宴会した。(エアコンも止まってしまうんで大変)
みんなの前では相変わらず明るくおっっちょこちょいだった。
が、一人夕暮れの海辺でぽつんと海を眺めてる姿も何度か見かけた。さみしがり屋でもあったんだろう。

まあ、そんなわけで私にとってはダイビングの最初の先生であり、
神輿の世界を教えてくれた人であり、よき飲み仲間であったわけで。


変化があったのは2008年正月。
毎年来る年賀状がきていなかった。ちょうど伯父が亡くなってあわただしかった年末年始でもあり、
気にはなったがそのままにしておいた1月末のこと。
神輿会の元会長から突然メールが届く。メールタイトルは彼女の名。
「末期がんってなに?」

???

何がなんだかわからない。そういえばしばらく彼女とは連絡とってない。
元会長に聞いてみると、彼女から届いた葉書に末期がんとかなんとか、書いてあったと。
いそいで彼女の携帯に「どうしたのか?」とメール。
しばらくして返信がくる。

「子宮ガンの末期で手遅れで手術もできなくて・でもどうにか退院までこぎちけました。
元気だよ、安心してね。でも今までみたいにはできないけど。飲み会大丈夫なので誘ってくださいな。
くれぐれも身体大事にしてね。これからもよろしくです!」

混乱した。末期だけど元気?なんだ?
おっちょこちょいだから初期と末期の区別がついていない?いくらなんでもそんなはずはない。

とにかく退院したというから電話して詳しく聞いてみる。

-----
2007年12月初旬に足の痛みで整形外科に通院するも治らず。原因はわからず通院続けた。
生理一ヶ月以上止まらない。
「更年期障害じゃない?と人にいわれつつ、医者へ」。
いままでしたことないからと念のため子宮癌検査したところ、末期と判明。手術は無理。
大きくなっていて腎臓の片方にも転移していた。
が、病院いっぱいで入院一ヶ月半待ちと。
緊急状態ではないという判断らしい。(そんなばかな!)
自宅待機でモルヒネ!で痛みを和らげて待つ。

その数日後。激痛に襲われ、救急車で病院。
そのまま横浜の病院に(無理矢理)入院し、放射線治療+抗ガン剤治療。
抗ガン剤の副作用に苦しむ。(壮絶らしい)。

ほぼ2ヶ月入院

2月5日退院。逗子のアパートへ戻る。
放射線により、ほとんどのガン細胞をやっつけることはできた。
が、もちろん100%ではない。
今後再発する可能性は五分五分。定期チェックでマーカー値が上がったらまた治療するしかない。
こうやって一生付き合っていくしかない。
アパート代のため少しずつアルバイト始める予定。

「大丈夫、まだ死なないよーー」

-----

とまあ、こんな話で。

2月10日
清志郎復活祭へ出かける。いろんなことが交錯して泣いたり笑ったり。
デイ・ドリーム・ビリーバーが彼女のことを歌っているようにしか聴こえない。

とにかく退院して飲み会でもOK、というのでまずは退院祝いだ、と宴会を設定。

2月23日
強風で電車もストップするような荒れた天気の日。
横浜中華街で退院祝い宴会で数名集まる。本牧在住の友人お勧めのお店青葉新館。
(逗子に住んでるので近いほうがいいかも、と横浜にしたけれど案外面倒だったよう)。
経緯、治療の様子などさらに詳しく話を聞く。
見た目はまったく以前と変わりがない彼女。とてもそんな治療をした後とは思えない。

4月5日
逗子の彼女の家へ遊びに行く
やはり数名の仲間で。楽しくおいしく飲んで食べる。皆で砂浜散歩も。
結局皆、海が好きなんだな。

逗子から帰ってきたあと、彼女からメールがくる。
「楽しい時間を過ごせました。ありがとうです、仲間っていいなぁ、
ありがたいなぁーとしみじみ思いました。いつでも待ってるだよ!また、来てね!」

5月末、調子はいかが?とメールしてみる。
「メールありがとう、なんか虫が知らせたのかな、とても心ぼそかった。
放射線の影響で膀胱に穴があいてしまったの。
これから先生と相談して、ちょと大変になりそうで、でも、元気だから安心してね!
はっきりしたらメールするね!しかしあちぃね!」

数日後電話で詳しく聞いてみる。膀胱が使い物にならないらしい。要するに溜められない。
「大変だけど元気だからー。もうオシメしてビール飲むさー」と明るく話してた。

7月初旬、川道のブログを見るとスタッフが載せた彼女の写真を発見。
入院している民宿のおばあにどうしても会いたくて沖縄へ行き、
阿嘉島への行ってダイビングもしたらしい。
以前と何も変わらないように見えるその写真。島に行ってダイビングもやった、ってことで安心した。

7月14日
清志郎、癌再発のお知らせ。

11月後半
私ら夫婦も民宿のおばあに会いに沖縄へ。その相談で何度か彼女にメールする。
「おばぁに会ったらまた、あったかくなったら行くからねって言っといて、よろしくお願いします。」なんて返事。

帰ってきておばあの様子を連絡するとちょっと調子が悪い、という返事。
「うん、今度は腎臓が痛くて、一個になっちゃってるから負担がかかっちゃってるみたいで、でも他は元気だよ。ごめんね・心配かけちゃったね、よかったぁ、おばぁに会えて、お天気残念だったね。また、夏がいいね!」

祈るしかない。


2009年正月
普通に年賀状が届いたことで一安心。

3月
広島へ引っ越した海仲間が久しぶりに東京へ北ので数名で飲み会。
その飲み会したことを彼女へメール。その返信に再発の文字。
「わぁー、来たんだぁー、楽しい飲み会になったね。あたしはまた再発してしまい、
抗がん剤と戦ってます。今、実家にいます。当分体力なく外でれないので元気になったら会いに行きます。頑張るから待っててね。」

どう返事したらいいのだろう。「おう、待ってるさー」とだけ書いて返信。

5月2日
清志郎が亡くなる

5月5日
彼女も後を追うように亡くなる

5月8日
通夜。
もともと痩せていた彼女は記憶よりふっくらした気配さえあり、
ただ眠っているようにしか見えなかった。

 

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彼女のトライアスロン仲間だった歌手の古代眞琴さんのブログにもいくつか彼女のことが掲載されてました。

2008年05月07日
http://blog.livedoor.jp/gatter3/archives/50556024.html

2008年05月26日
http://blog.livedoor.jp/gatter3/archives/50591794.html

2009年05月06日
http://blog.livedoor.jp/gatter3/archives/50791934.html

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