2010年2月アーカイブ

「クロッチが水を舐めた。あけたての缶詰の匂いをかいで鳴いた」

ツイッターに書いたら、すぐさまコメント、ダイレクトメッセージをいただく。
ありがとうございます。
右に貼り付けた分と異なるのだが、私のツイッターTL(タイムライン)上には、自分をフォローしてくれている人からの書き込みが表示される。涙が出た。

水分を吸収して、おしっこを出せるようになれば、もしかして回復していくのか。もしやもしや・・・? ああ、つい欲が出ちゃうなと自分を笑った。

配偶者をご病気で亡くされた人が「彼女も生きたかったと思う」といっていた言葉を思い出す。

が、ダメだった。クロッチは確かに水を舐めたが、まもなくして全部戻してしまった。

もうツイッターにはあまり書かないほうがいい。
ツイッターはTLに並ぶ声を、読み飛ばすにしても、
ざっとは目を通すことになるので、これ以上、やめようと思う。

ブログだったら、読みたい人だけ読めばいいから、書いても大丈夫でしょうか・・・。
読みたくない人はやめてくださいね。

夜、靴箱の下側に潜り込んでしまったクロッチ。
物陰へ物陰へ、寒いほうへ寒いほうへ行ってしまう。
吐く音がして、みにいくと、物陰の隙間から涙目だけが見えた。
あとで見たら、吐く音はしたものの、ほとんど何も吐いていなかった。
彼女の体内には、吐けるものがもうあまりないのかもしれない。
なのに、吐き気ばかりがあるのである。
吐き気が体力を消耗させ、眠らせない。
体内で何が起こっているのか。一体どういうことなんだろう。

私がそばにいると、ほかのねこが来てしまうからクロッチが休まらない、と連れに言われた。
それもそうだ、と思う。

その後、クロッチは風呂場のイスの影でうずくまっていた。

なすすべもなく、そばに毛布やらマットやら敷いてやる。
なんとか少しでも眠って欲しい。そっとして離れる。

私も寝不足なので、早めに布団に入ってみる。
クロッチが眠れますように、吐かずに眠れますようにと祈りながら。

ちょっとうとうとしたが、目がさえて眠れない。
眠れない思いをどうしたらいいのかわからない。

すると、2階 台所から何かが飛び乗ったような音がしたのだった。

ほかのねこかと思って、でも一応みにいった。

すると、我が目を疑うような光景がそこに。

クロッチがシンクにいるではないか。いつも水をためてあるボールが置いてあって、
そこがクロッチ愛用の水飲み場なのだった。
ほとんど動きがとれなくなっているのに、
1階の物陰から2階までよく上がってこられたものだ。
しかも、シンクの高さまでどうやって飛び上がったのだろう。
最後に吐いたのが夜9時半か10時ごろだろうか。
もしかしたら少し眠って、体力が少し戻ったのかもしれない。

クロッチはただそこにたたずんでいた。
水飲みのボウル、水面に顔を近づけたまま、動かずにいる。

時間が経過して、しばらくして、ぴちゃぴちゃ。
水を舐める音がした。
確かに水を舐めた。
吐く一方なので、体が水分を必要としているのだろう。
動物の本能で、水が欲しくなったのだろう。

シンクのはじに置いてあった缶詰の空き缶の匂いをかぐ。
もしかして缶詰に関心を持ったのだろうかと、
試しに、新しい缶詰をあけて匂いをかがせた。
すると、はっとした感じで「ニャー」と鳴いた。口はつけないが、食べものの匂いを久々に思い出したようだった。

水を飲む。食べものの匂いを思い出す。
これはもしかしたら生きようとしているのか?

そこで、冒頭の言葉をツイッターに書いたら、すぐさま
反応をいただく。涙が出る。クロッチにも、反応をくださった人にも、
前にツイッターでコメントをくださった人にも、すべてに感謝する。

ゆっくり時間が経過する。
シンクから降りて、今度は冷蔵庫前に置いてあった水入れの脇でじーっとしていた。
水分をとることを思い出したかのように。

ずーっとそこで動かずにいたが、ピチャピチャと水を舐めた。

生きようとしているのだ。
とったものをすべて吐いてしまう状態なのに、水をとろうとしたのだ。
とった水分がクロッチの体内で吸収されますように、
吐かずに吸収されますようにと祈る。

ノドが乾いたら水分をとる。食べる。排泄する。眠る。
そんな普通の行為が、生を支えていることを、私たちはふだん意識しない。
なぜかというと、健康な人間・生きものにとっては普通のことだから。
「寝てばかりいて」とダメ人間のように自己嫌悪する人がいるようだが、
眠れる、ということは大事な生の営みなのだ。

クロッチはもうすでに、食べる、消化吸収する、排泄する、眠る、をほとんどできていない。

水分をとったあと、動けずに水入れの脇にうずくまったままだったが、
やがて、すべて戻してしまった。
とった水分よりもっと多くを吐いてしまった。

ゲエゲエ、吐いて、吐く際、エエーっとノドが鳴る。
大変苦しそうだ。

吐いて消耗して、力を振り絞って階段をゆっくりゆっくり降りていき、
玄関たたきでぐったりしている。
水分をとってみたものの吐いてしまった自分がもうダメだと
気づいてしまったのかどうか。
あるいは、ただ消耗して疲れ切っているのか。

食事はおろか、水分さえ自力でとれずに、すべて戻してしまう。
彼女はもうダメなのかもしれない。
でも、確かに水分をとろうとした。生きようとしていた。
気力があったのは確かなのだ。
気力が体力を支える、と信じたい。

わずか4日でねこをここまで弱らせてしまった原因は一体なんなんだ。
検査結果が出るまで治療方針をかためにくいため、
点滴で水分・栄養投与する以外に治療方法がないらしい。
私の身勝手かもしれないが、もうちょっと、何かしら、納得のいく説明をしてほしい。
近くの動物病院の先生たちが、なんとなく疲れていて
大変そうだが、もっと説明してほしい。
もっと治療方法がないのか、もうちょっと熱意を持って考えてみてほしい。
遠くの動物病院に連れていくことは不可能だけれど、
何もしないでいるのは辛すぎる。
あまりにいろいろなことが急に起こって、心理状態が追いついていかない。

昨日、アンチヘブリンガンで、どなたかから紹介してもらった動物病院の電話番号が
携帯にはさまっていた。
彼女がなぜこんなことになっているのか、何か打つ手はないのか、電話してお尋ねしてみようかと思う。電話だけだと治療費につながらないので良くないんですけどね。

なんとか生きてくれるよう、見守るしかない。
だけど、何か手があるなら教えてほしい。
検索しても似た体験談や欲しい情報を得られずにいるので、こんな拙文でも、いつか、どなたかのお役に立てば、とも思う。本当は何も手につかず、書くぐらいしかできないので書いているんですけどね。こんな乱文にお付き合いいただき、感謝申し上げます。

ツイッターのTLをうまく追えなくなってきてしまった。

励ましの言葉をくださいました方々、本当にありがとうございました。

どうしたらいいのだろう・・・。

何も手につかない・・・。手をつけられない。

ねこが病気になってしまった。
月曜から激しく吐いて吐いて、食べもせず、水を飲むこともせず。「トイレが汚れていてストレスがたまっているのかな」と家族と話したが、まだ事の重大性に気づかなかった。
火曜、激しい吐き方が尋常でない、ただごとではない、と思い、起きてすぐ
動物病院に連れていく。
以前から食べてはすぐ吐くねこである。ナイロンのトートバッグなど、ざらざらしたものを舐めまくってはしばしば吐いていた。ところが、今回は、苦しそうに吐くさまが一見して尋常でない。苦しげに吐いて吐いて、最後にエエエーッという呻きをあげる。
水入れの器の前でうずくまって、ぼーっとしていたので、
連れていくしかないと思い、気の毒だが後ろからタオルをかぶせて目をふさいだ。
力づくでキャリーバッグに入れようとしたところ、
全身のバネを使うような、力強い抵抗にあった。そのときは力があったのだ。
相性の合わないメス猫がケンカを売ってきて、ふぎゃーっと対抗する力があった。

気が強いが臆病な彼女。
車にのせて、動物病院につれていくまでに
彼女は失禁していた。
よほど怖かったのか。あるいは、起きてすぐでトイレを我慢していたためか。
吐いてばかりいるので、おしっこの濃度が高まっているのか、匂いの強い尿だった。

体重2.9キロ。
獣医師の指導により、胃腸炎の治療をするか、
あるいは何の病気か検査をするか、どちらか選ぶよう言われた。
何も食べられずにいるので、
まずは皮下注射で、胃腸薬、ビタミン、吐き気ドメなどの入った溶液を
体内に入れてもらう。
不慣れな病院行きに怯えきって小さくなっていたが、
家に戻ってきたら、おや、あら、ここは家じゃないの、という感じでボーッっとたたずんだ。

そして、じきにまた、吐いた。
緊張と疲れからすぐ眠るのかと思ったら、なかなか眠らない。
心ここにあらず、という感じでうつらうつらしては、力なく目をあけていた。
自分は梱包・発送作業があったので倉庫へ行って作業をして
忘れかけていた歯科検診に行こうと急いで洗面所で歯を磨いた。
ふと気づいたら足下に「えへ」というような、いたずらっぽい顔でやってきていて、驚いた。
それまでの怯えた顔、三角の目が、ふだんの童女みたいな可愛らしい目になっていた。
が、歯科検診まで時間がなくて、ごめん行ってくるねと相手もできずに家を飛び出した自分。

彼女の名前は「クロッチ」。
飼いねこのうち、いちばん小さい黒ねこ。
メモを確認してみたら
「2003.4末生まれ
2003.5.22 きのうから外で鳴いてたコネコ 苦心して保護 ライオンへ 600グラム 1月?」と書いてあった。
「ライオン」とは動物病院の名だ。

生まれてじき迷いねこになってしまったらしく、
我が家の猫額状の庭のどこかで、大きな大きな声で鳴いていた。
隣の家の二階から、住人の女の子がどこにいるんだろうとキョロキョロ目で探していたほど大きな大きな声だった。
声はすれども姿は見えず。
が、どこかにいるはずと目をこらしていたら、あ、エアコン室外機の上にちょこんと黒い毛玉みたいなものが・・・。あれ、っと思うほど小さい体だった。
小さな小さな黒いねこ、それがクロッチとの出会い。

保護するのはとても大変だったが、その日から
クロッチは我が家の完全室内飼いねこになった。

我が家にはすでに4匹ねこがいたので、
たとえばねこエイズウイルスなど持っていないかどうか、検査結果が出るまで
1階の"本部屋"に隔離して、ケージの中に入れていた。

野良ねこだったらしく、警戒心の塊だった。
あるいは、彼女の気性の激しさからか、
何するんだ、出せ出せとばかり、ケージの中からドンドン体当たりして
ケージの側面に張り付いた。

ケージから出すと、コピー機の下に入り込んだまま、出てこない。
が、遊びが大好きな子猫である。
おもちゃの音がすると、すぐ出てきて、ジャレついて遊ぶようになった。

結局、危険なウイルスは持っていなかったので、おそるおそる、当方のねこらと対面させることにした。
ねこは縄張り意識が大変強い。相性があわないどうしだと大変なことになるのだ。

ついに部屋の扉をあけてみる。
ほかのねこたちが、おそるおそる観察しにきた。
古株の「ふう」という名のメスねこが驚いた顔になり、激しく威嚇した。
クロッチは、まるでそちらの方向にリビングがあり、皆がいるのを知っていたかのように、
一目算に、二階へと階段を駆け上がった。

はじめ、クロちゃんと呼んでいたが、やがて「クロッチちゃん」と呼ぶようになった。
たかが、ねことお思いになる方も多いだろうが、
自分にとっては「家族」である。ほんの小さかったころから知っている。

家族が食べられず飲めず、それどころか激しく嘔吐を繰り返す一方で、
どんどん弱っていくのだ。どんな気持ちか、ご想像のできる方もいらっしゃると思う。
吐いて吐いて、口のまわりに吐いたものがついたままだ。
神経質なねこなのに、もう毛づくろいする元気もないのだろう。
今はもうあまり動けなくなってきている。
水の器の前でずっとうずくまり、長いしっぽが床に力なく落ちていた。

ほかのねこらがスタスタ歩いて、ぴょんっと軽々高いところに飛び乗る。
ほかのねこは生きている。食べて、動いて、エネルギーを放散している。
ところが、クロッチはどうだ。
もはや、同じ生きものと思えない。
彼女は生きているようでも、もしかしたら境目あたりにいるのではないか。

昨日、レントゲン撮影、血液検査をして、白血球やその他の値から
免疫力が上がっていて、免疫が体内でかなり働いていることがわかった。
ウイルス性のものらしい。
コロナウイルスなのか、あるいは、膵炎ではないか、と医師の話。
検査結果が出るまでかなりかかるとのことで、
まずは単純な胃腸炎の治療を徹底定期にしましょうと、6時間ほど入院させ、
点液治療してもらった。
ゲエゲエ吐き続けているので、食道が炎症を起こしているだろうとのことで
経口薬を投与されたらしい。
帰って直ぐ、おそらくその薬だろうと思うが、褐色の液をゲエゲエ吐いた。
残念ながら治療の効果が出ていないようで、その夜もまた何度も吐く。

今日も朝からもう何度もゲエゲエ吐いた。
朝、洗面所でうずくまっていたとき「クロッチ」「クロッチ」と呼びかけたら
こたえたのが唯一の救いだった。奇跡のようだった。
午前は、風呂場のイスのカゲでうずくまったままだった。
先ほどはスピーカー裏で後ろ向きのまま吐いてじっとしていた。
ヒーター前へきてじっとしていたが、目はうつろだった。
水飲みのほうへ行き、水を飲むでもなく、ただ、じっとしていた。
今は、パソコンなどの置いてある部屋に行き、物陰にこもっている。
先ほどもまた激しく吐く音。もう吐くものもあまりないはずなのに。
吐いてばかりでほとんど眠っていないようなので
吐いたままでいい、弱ったままでもいいから、お願いだから、少しでも眠ってほしい。
少しでも体力を回復してくれないと、もっと弱っていく一方だろう。
眠りを彼女に、と祈るような気持ちで、ただ、そっとしておく。

原因はわからないまま、ただただ、何度も吐くばかり。
点滴はしてもらったものの、吐くばかりなので
全身が消耗していて、もうあまり動けないのだ。
物陰に物陰にと行くが、吐く音でどこにいるのかわかる。
何日か前なら軽々すいっと軽い身のこなしで逃げていたはずなのだが、
もうほとんど動けずに、口を半開きにし、吐いたものがヨダレ状に口からぶら下がっている。
気性の激しいコなのだから、なんとか回復するものと思っていたのに、
吐いて、うつろな目でじっとうずくまっている。私は何もしてやることができない。
物陰から出てきたら動物病院につれていくとしても、
原因がまだ判らないため、
また皮下注射か点滴をして水分・栄養補給をしてもらうだけだろうし、
何より、彼女が怯えて消耗するのが眼に見えている。
彼女が言葉を話せるのだとしたら、きっと「どこにも連れていかないで、
そっとしておいてほしい」"Leave me alone."と言うだろう。

もう食べず飲まず4日めになる。
自己治癒力を発揮して治るためには、すでに弱りすぎてはいないか、
と、怖ろしい想像ばかりが頭に浮かぶ。
わずか数日で、まったく違うねこのように弱ってしまっている。

命の存在に、他者は何ができるのか。
無力すぎて、哀しい。

物陰に隠れる名人で、いつもどこにいるのか探せない彼女。
ただ、私が寝る前に風呂に入りにいくと、いつも廊下で待っていた。
そして、階段を駆け上がっては、壁に前足をかけて、立ち上がるようにして
私の手に頭を押し当てて「撫でて撫でて」とばかり甘えてきた。
あのときのあのまんまるい瞳に、また会いたい・・・。

何もできず、そっとしてやることしかできない。
食欲がないが、私は自由に動くことができる。
何も手につかないが、
ともかく、洗濯物を干すことにしようか。
生きている者は生きていかないと。

不慣れな動物病院につれていき怯えさせたくない。
もしも終わりを迎えるなら家で、と思う。
それでも、やはり動物病院で水分・栄養補給しないと、いよいよ時間の問題になってくるだろう。どんなに弱っても、私はまだまだ彼女の命に執着している。
数日でこんなことが起こるなんて、誰に予測がついただろうか。
本当に現実なのだろうか。
自己満足だとしても私は強く、強く、強く、願う。
クロッチ、生きてほしい。垂れ流すような乱文で失礼しました。また吐いている。

140字じゃ書ききれないので、今日はツイッターではなく、ブログにする。

梱包・発送の多い日だった。
週明けの月曜は、たいてい、週の中でいちばん発送が多い。
ましてや、この経済状況下にあっては、本の単価が低いため薄利多売どころか薄利薄売というのか。
とてもたくさん梱包して多くの方にお送りしたような錯覚にとらわれても、
売り上げはさほどではないという・・・。
古書店にとってはなかなかハードな状況だと思う。

古書市場であれこれ古書を見て、帰宅してから梱包・発送となると、目が疲れるし、
集中力が落ちる。発送のミスがあってはいけないのでそこそこ神経もつかう。

5匹いる飼い猫のうち1匹、何度も激しく胃液を吐いていたので、とても気になる。
ずっとついているわけにもいかず、倉庫でひとり梱包作業に打ち込む。

目からじわーっと涙が湧いて出てくる。
あれこれ悲しいのか、あるいは単なる眼精疲労のためか、よく分からない。

で、今夜は、8時半にJRの最寄り駅まで、
とある方からご注文いただいた本を届けにいく仕事も加わった。

昨夜遅く、F書店、あの絵雑誌の編集部の方から
ご注文をいただいたのだった。
とても急いでいる様子で、火曜に使いたい、できれば月曜中に入手できれば、とのこと。

企画会議にでもお使いになるのかと思って、まあ、
それほど御入り用なのであれば、お力になりたいじゃないですか。
自分が編集者だったら企画会議にどうしても必要なものなら何としても用意したくなるだろう。
しかも、私が好きなあの絵雑誌の編集部だし、
実は、バックナンバーはずいぶん当店でも扱わせてもらっていることだし、むげにはできません。
勿論、誰にも彼にでも急ぎの要望をいただいても応じられるはずもなく、
たまたま、今日は条件が重なって対応できたわけだが。

眼精疲労のピークだが、目薬をさして、なんとか運転して駅へ駆けつける。

藤田朋子(知らないよ、っていわれそうだ。あ、藤田さん、すみません)を若く可愛らしくしたような
キュートな女性編集者が待っていた。

大変恐縮していただき、かえってこちらが恐縮してしまうほどだ。

「本があったほうがお話しやすいと思うので・・・。本当に嬉しいです」と本をお手にとって

「実は、×××××子さんの思い出の本なんです。『××と××』(皆様ご存じの名作絵本)の××さん。
××さんがお子さんだったころ、お友達の家で誕生会があって、
そこのお母さんと皆で本屋さんに行って
『好きな本を選んでいいわよ』と言われて選ばれたそうです。
絵もなんですが、お話がちょっと変わっていて、とても心に残ったそうです。
その本が手に入るなんて思わなくて諦めてかけていたら、
知り合いがネットに出てるよって教えてくれて・・・」

××さんに思い出の本をお手にとってもらうことができるなんて・・・。自分もほんの一隅にでも関わってお役に立てるなんて、まるで夢のようだった。
××さんが本をお手にとって、思い出の本との再会をどのように味わうのか、想像しただけで目から水がこぼれてきそうで困った。
思い出の本が、その人にとってどれほど大事なものかと、
さまざまなお客様から教えていただいてきた。実際、そうなのだとつくづく思う。

たまたま当方の目録掲載品が残っていて、
日本の古本屋サイト上に掲載してあったものが、
今夜、女性編集者のもとへと行き着いたのだった。
自分はいつどこでその本を入手したのか、よく覚えていないが、
いにしえの人の手から古書店の手を通じて、
古書市場に出てきたものを買ったのだろうと思う。
めぐりめぐって本がまわっていく輪の中に加わることができ、
仲介することができた歓びを与えていただいた。

実をいうと、昭和26年刊のその古書は、黒田辰男・編・ブブノワ絵、
装丁がユニークで、海ねことしても手放しがたい本であった。
が、その本がどなたかのお役に立つというのがどれほど嬉しいことか。

しかも、若い女性編集者にとって、決して安くない値段だと思うのに、
会社のお金でなく、自費で買ってくれた。××さんのもとに何とか本を持参したいという熱意、××さんに対する思いやり、編集者としての矜持など、さまざまなものが伝わってきた。
「ありがとうございます」という言葉が心底からしみ出した。

帰り、運転しながら、目から水が溢れてくるのが、
ドライアイのためなのか、嬉し涙なのか、自分でもよく分からなかった。

地を這うように働いているけれど、この仕事をしていてよかったと思う瞬間がある。

また、どなたかの思い出の本をご用意することができるよう、
良い本を蒐集してご紹介していけたら。
そんな気持ちを、くっきり思い出したのは久々のような気がした。
非日常が日常になって埋没してしまうと、忘却の彼方に追いやってしまうことの多さ。

たいていの場合、どなたかの思い出に残る本というのは、
きちんとつくられた本であることが多い。
だれかのいろいろな思いが厚く詰まった本は、違うだれかの心に強い印象をもたらすものなのだろう。
しっかりよくつくられた本ーー当店の場合は、主に絵本・児童書なわけだが、
戦後じきの驚くほどよくつくられた本をもっともっと集書したい。
集書しながらいろいろ知ることができ、しかも、どなたかの思い出の本をご用意することができるかもしれない。
良い仕事です。


たまに喜びがあるからこそ、日常的な自転車操業の日々も、
ヘトヘトな日々も、シワシワかさかさになった手も、
古書のヨゴレ落としも、重くてしんどい労働も、
さまざまなストレスも乗り越えられる。

ちなみに、女性編集者は明日、××さんにお会いして、
夏ごろ発売になる絵雑誌の付録(小冊子)について相談をするのだという。
少なくとも夏までは無事、生きて、冊子を拝見できる日を迎えられますように。
希望を与えられる、希望を与える、どれもこれも「人」なんですね。
お客様のことをあまり書いてはいけないのだと思うが、
恐縮ながら書かせていただきました。
Nさん、ありがとうございました。
明日、良いお話をお伺いすることができますよう、お祈りいたします。

「最近、ブログ更新してないけど、どうしたの?」と、何度かお尋ねいただく。
「弱っているんじゃないか心配していた」とまでお気遣いいただき、恐縮しております。

ブログこそ更新していないですが、
ごちゃごちゃ、くだらないことをつぶやいてはおります。
ブログの右脇のほうに貼り付けてありますので、
くだらないことは重々ご承知のうえ、それでもお許しいただけるようでしたらご覧ください
(本当にくだらないと思いますので、あくまで流し読みでお願いいたします。1日何度も書くことがありますので、新しい「ツイート」(つぶやき)がどんどん上に追加されていきます。古い声をお読みになりたいという奇特な方、右側のバーを下側のほうにスクロールしていけばご覧いただけます。もっと古いほうをお望みの方は、「tomobash」というところをクリックしていただけば、過去までたどってご覧になれると思います)。

今は、自家目録2号をなんとか出そうと
日々、少しずつですが製作中です。
とともに、集書のため、古書市場に通っております。

なんとか出来上がったところまでで目録を世に送り出し、
お探しの本と何かしらマッチングしますようにと祈っております。
吹けば飛ぶよな弱小店としては、古書を集めるばかりですと貯金が目減りする一方です、うう。
限界になる前になんとか、それなりのものを作り上げるしかないようです。

それから、古書組合 中央線支部の支部報を製作するのですが、
原稿がまだお二人から届いたのみです。おろおろ。
興居島屋さん、啓明書店さんからはいただいております。
もしも、ほかのお店ですでにお送りいただいているのにとお感じの方がいらっしゃいましたら、
お手数ですがご一報いただけますと幸いです。
こちらのFAXの不調などで受け取れていません場合
どうしよう、と、あまり良くない頭を悩ませております。
実は、原稿の集まりが良くなかったらどうしようかと、もっともっと悩んでおります。
中央線支部のお店の方々、どうか宜しくお願い申し上げます。
今のままでは支部報のために苦闘して、
その間に自分の店が傾きそうだ。うう、不安でなりません、よよよ。

私事ですが、最近しばらく体調があまり良くありませんでした。
同世代の友人とメールしあったり、他店の女性店主と話したりで、どれほど救われたことか、
いつか自分も恩返ししたいものだと思います。
あとはもう、ひたすらよく眠り、よく呑んで(?)、
ようやく少しずつふだんどおりになりつつあるかもしれません。
買取をお待ちいただいているお客様には申し訳なく感じております。
できるだけ早くご連絡差し上げられますよう心がけます。

寒さが厳しいです。周囲に入院された方、通院中の方、何人もいます。
生きていくのが楽な時代ではないかもしれません、
ですが、なんとかお互い生き延びてまいりましょう。
乱文失礼しました。たまにはブログも書くようにしないと、
140字(ツイッター)頭になってしまいそうな。それも悪くないですが、
まあ、たまにはブログも書いていきましょう。ではでは、また。

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