チャールズ・キーピングという人

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 好き嫌いのハッキリ分かれるチャールズ・キーピング。
実は、海ねこは、かねてより心ひかれて集めてまいりました。
万人受けするものよりむしろ、好きな人はたまらなく好き、といったものが個人的には好みです。
そういうものこそ、扱っていきたい。そんな店があってもいいじゃないですか。
 嫌いな人に別に無理に押し付ける気はありませんが、
ご存じない方には、一度お手にとってみては、と思う次第です。

 絵柄の重苦しさ、一筋縄ではいかない難解さ、などから敬遠する人もいるのですが、
これほど、繊細にしてダイナミック、
詩的ともいえる独自の世界観を貫こうとした人もいないのでは?
光は闇があってこそ輝く、闇あってこその光、いう話を思い出させられます。
 長年、じっくり支え続けたOxford University Pressもスゴイと思う。

 チャールズ・キーピング(Charles Keeping 1924年~1988年)は
ロンドンの下町、ランベス生まれ。
14歳のとき印刷所へ奉公に出され、技師として働いたのち海軍へ従事。
海軍退役後の5年間、リーゼントストリート工芸学校で、リトグラフ、エッチングを学びました。
そののち、作家として活動しながら、同校で石版を教えていた時期も。
 サトクリフ作品の挿絵などでも有名ですが、自ら文章・絵ともに手掛けた絵本も多数。
絵本では、自身の少年時代の体験をもとに、多感な子どもの心を描き続けました。
一貫して舞台としたのは、自らが働きながら生まれ育った下町でした。

"Charley, Charlotte and the Golden Canary"(日本語版「しあわせどおりのカナリヤ」)で1967年ケイト・グリーナウェイ賞、
また"The Highwayman"1981年にも同賞を受賞。
1975年には"Railway Passage"(日本語版「たそがれえきのひとびと」)でBIB金のりんご賞を受賞しました。

ごく一部ではありますが、作品を紹介します。

keeping shiawase.jpg

↑"Charley, Charlotte and the Golden Canary"1967年。
日本語版「しあわせどおりのカナリヤ」。
移り変わってゆく街に暮らす少年少女。カナリヤを通して二人は・・・。
もっとも入りやすいので、キーピングの入門にもオスススメ。

keeping alfie.jpg
↑"Alfie and the Ferryboat"(日本語版「アルフィーとフェリーボート」)1968年。
テムズ川の川岸、砂糖工場の裏に住むアルフィー少年。
毎週金曜ごとにやってくるバンティおじさんは、すりきれたレコードを古びた蓄音機でかけます。
そして、船乗りだったころ、冒険をした話をしてくれました。
キーピングのおじいさんも、やはり船乗りで、すぐれたストーリングテラーだったそうです。
日本語版は、神宮輝夫・訳。

keeping christmas.jpg
↑"The Christmas Story"1968年。
カバーにはこんな紹介文が。
Charles Keeping has been illustrating books for  about twelve years,
and has come to be recognised as one of the outstanding English artists in this field."
(キーピングは12年間ほど、絵本を作り続けてきて、
この分野において、卓越した英語のアーティストの一人として認識されるようになってきました")
やはり、個性的すぎるというのか、英国でも、そうそう簡単に売れたわけではない、ようです。

keeping josef.jpg
↑"Joseph's Yard"(日本語版「ジョゼフのにわ」)1969年。
れ果てた庭に1本のバラを植えた少年のお話。
ようやく育ったバラのつぼみを目にしたとたん、ついつい大好きなあまりに摘みとってしまい、
バラをダメにしてしまった少年は・・・。

keeping madonomukou.jpg
↑"Through the Window" (日本語版「まどのむこう」)1970年。
ジェコブ少年が「まど」を通してみた、現実とも夢ともつかない1日の出来事。

keeping richard.jpg
↑"Richard"(1973年)。
スコットランドの警察馬として働くリチャードを力強くも優しく、独特のタッチで描いた作品。

keeping wasteground.jpg
↑"Wasteground Circus"(1975年)。
さびれた街にサーカスがやってきたさまを、二人の少年の目を通して描いています。

keeping inter.jpg
↑ほとんど文字がない不思議な絵本"Inter-City"1977年。
メトロで移動する人々の様子、
そして、窓によりかからないで、と小さく書かれていますが、
心の窓から眺めたかのような心象風景・・・。

keeping willies.jpg
↑"Willie's Fire-Engine"1980年。
消防士に憧れる少年ウィリー。
でも、実生活でのヒーローは、ミルク売りおじさんミックでした。
ミックがやってこない日が続いて・・・。
同じくミックを探す少女と出会います。
怖いけど、目を離せないような・・・。
キーピングの絵本にはいつも驚かされますが、これもまた、一体なんという絵本なのか。

keeping adam.jpg
↑Adam and Paradise Island"1989年。
巻末に"Charles Keeping 1924-1988"として、
オックスフォード大学出版のために30年以上、イラストレートブックを作ってきたこと、
キラリと光る、オリジナリティーあふれるアーティストとして広く認められていること、
1988年5月16日に亡くなったこと、
これがオックスフォード大学出版にとって
キーピング、最後の作品であることが記されています。

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