今日のお客様 続き

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ひとりのお客様から、いろいろまとめて32万円分、ご注文をいただいた。
セットもののうち何冊かをご希望いただき、これだけ頼んでいただいたので、
バラ売りしたほうがいいなあ、など考えながら在庫確認している。

朝起きて、そんな夢を見たといったら
家人に「正夢じゃない?」と笑われた。

パソコンを開いてメールを確認したが、
32万円分のご注文はなかった。
やはり「夢」だったのだ。
32万円分のご注文があったらいいなあという願望が
夢になって店主の脳内を駆け巡ったのだ。
夢は枯れ野を駆け巡る、だ。

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英語だとインディアンサマーというのかな。それにしては風が冷たいけれど、
今日は良い天気ですね。皆さん、お元気ですか?

古書店にとっては、なかなか厳しいご時世です。
第二金曜は、神保町の市場から五反田の市場へとはしごすることが多い。
古書店主どうし四人でタクシーを使うと、割り勘で千円以内でおさまるので、
移動中に、あれこれ話を聞くのが楽しみです。

「海ねこさん、絵本、売れてる?」とNさんに聞かれて
「・・・・・・・。思えば、日月堂さんの隣で6日間限定ショップを開催したでしょ。
あの頃はまだ売れてたんですよね。お客さんが大勢いらしてくださいましたよね」と答えたら
「そう、売れた。今と比べれば。そうなんだよね」とNさん。
「それって、まだ1年5か月ほど前なだけですよね」というと
「3月頃から本当に厳しくなってきたよね」とNさん。
「1年5か月前って、まだごくごく最近の話じゃない」とSさん。

NさんもSさんも、有名店の店主です。
レベルがまったく違いますが、以前より物が売れにくいようだ、という点において、意見が一致します。

これから先、どうなるんだろうね、と言い合いながら、
でも、売れそうなもの、お客さんに買っていただけそうなものはないかと
古書市場でガサガサ探し回っているわけです。
何も考えないで、何でも売れる時代ではないので。

そんなふうに、市場では、他店とたわいない会話もできるけれど、
自宅 兼 仕事場に戻れば、ひとりきり。
32万円分のご注文があれば、と夢見て「なんだ夢か。やっぱりなあ」と呟いても、ひとり。

そんなとき、先のエントリーでご紹介したお客様から
「ブログ、読みました」とメールをいただいた。
ご本人からご許可をいただきましたので、以下、ご紹介します。

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思いが深すぎて、重すぎて、海ねこさんを困らせることもあろうかと、
手紙を書きながら、心配していました。
礼状なら、もう、たくさんたくさん、いただいています。
古書店と客とは、ふしぎなキャッチボールをするものです。
 
私たちは、海ねこさんの書棚を見て、海ねこさんと話をすることができます。
海ねこさんは、注文を通じて、私たちと話をしてくださる。
ほら、図書館で手に取る人の姿までも思い浮かべて本たちを送りだすときのように。
目には見えないけれど、実は、私たちは会話のやりとりをたくさん、してる。
だから、古書は代々の持ち主の思いまでをも、
だるま式に幾重にも巻き編んでは、
時代をしなやかに生き続けることができる。
そうした幸運をたどれるのは、古書店の手に掬われた本たちだけです。
 
私たち客は、いろんな古書店を訪ね歩き、海ねこさんに辿り着きます。
私たち客は、並んだ書棚の向こう側にある海ねこさんの思いも、読みます。
だから、私たち客は、願っています。
海ねこさんは、「海ねこ」のまま、「海ねこ」になればいい。

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ありがとうございます、の言葉しか探し当てられないのが
もどかしいです。

お客様というのは、誠にありがたいものです。
「有り難い」ー実際、長くお付き合いいただけるお客様は
宝物のように思えます。
宝物の皆様、本当にありがとうございます。これからも宜しくお願いいたします。
古書店、なんとか、続けていけたら、と思います。
さて、どうすれば続けていけるのかな。
さて。

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