今日のお客様

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何度かお買い上げくださっていたお客様から
久々、ご注文をいただくたび、大変有り難く感謝するとともに、
「もっと良い本を紹介しなさいよ」と、ご注意いただいているような気がする。

"HPに良い本をなかなかアップできずにスミマセン"
と、心の中で頭を下げている。
ボーナス期で、お金を使いたくなる時期なのに、
本当に申し訳ありません。
良いものは目録に掲載しますので、どうかもう少々お待ちくださいと
さらに、頭を下げている。

といいつつ、次なる目録用の本はまだまだパンチ不足。
前までと同じように古書市場へ通って
集書し続けているのに、なぜ、これほど苦戦しているのかな。
目録2号よりずっと見劣りしそうで、
ガッカリされてしまいそうでスミマセン。
もうでも、そろそろ、あとちょっとで出さないと、
自転車操業の哀しさゆえ、今後の運転資金が危なくなってくる。
毎回毎回、目録でご評価をいただくのは
私が想像していたより遙かに大変なことのようだ。
ご期待に添えないかもしれずスミマセンと
今から頭を下げている。

年末、恵文社の古本市に本を出すのだが、
各店のオススメを見ていて、ビックリ。
他店が、素晴らしい高額商品を紹介していて、
光まばゆく世界のようだ。
ああ、うちが「オススメ」として挙げたものは、
近日公開されるはずだが、
見劣りするに違いなく、スミマセン。

今日、発送したセットもの、
地元住民らがボランティアで運営しているという
小型の図書館に渡ることになった。
古書の状態は良好、完全揃いものでありながら結構、手頃な価格だと思う。

お役に立ちますようにと祈るような気持ちで梱包する。
図書館に通ってきて本を手にとる方のご様子まで思い浮かべる。
きっと、多くの方にご覧いただき、ご活用いただけることだろう。本としては幸福なことで、店としては大変有り難いことです。

でも、その一方で、
御世話になっている方から「目録にお使いいただけたら」とお譲りいただき、
買取したものなのに、
ああ、もっときちんとした値段をつけて目録に掲載したほうが、
そして、もっとたっぷり買取額をはずんだほうが、
お譲りくださった方は手応えを感じたのかもしれない。
蒐集したものを高く評価してもらえない、と扱いにご不満だったかもしれない。
もう当方には声をおかけいただけないかもしれない。
せっかく目をかけていただいたのに、あれこれ申し訳なかったとも思う。
杞憂ならよいが、人の心の中までのぞきこめないので・・・。

どうして古本屋になったのだろう、
と、最近になって初めてかもしれないのだが、「どうして?????」と思うようになった。
古書市場で買い続けるのも、同業仲間と競い合い続けるのも、
充実している目録を作り続けるのも、たやすいことではないのに。
お客様にずっとお喜びいただきたいと思っても、
なかなかそう簡単に出来ることではないのに。
自分は、古書店の楽しそうな部分のみを見て、何も考えずに飛び込んでしまったのだなあと
今頃になって、これで良かったのだろうかと気に病んだりもする。
だんだん難しい面を思い知ってきたからだろうと思う。
買うより売るほうが大変な、今の時勢も関係しているかもしれない。

倉庫で梱包を終えて、自宅に戻ったところ、
ポストに分厚い封筒が入っていた。お客様からのお礼状だ。
集書を依頼されても、そうたやすく見つかるものではないのだが(さんざん探した挙げ句、集書を依頼されるわけなので)
たまたま、古書市場で目にとまって、お客様が永らくお探しだという本をご用意することができたのだった。
値段は2500円。
CD1枚より安いじゃん、と笑う人は、笑えばいい。想像力の欠如した気の毒な人だと思う。
お客様にとっては、ほかの何物にも代えられないもの。小学校の頃からの想い出が詰まった
人生の指針・道しるべともいうべき本だったようだ。
便せん4枚にびっしりと印字された手紙、
さらには手書きの一筆箋2枚まで添えられていた。
お返事をと思っても、この方の思いに一体どうお答えしたらよいやら、
矮小すぎる、おおよそ"チンケ"というしかない私に
どんな言葉を選べるものやら、一体どんな文章をお返しできるのやら、と
考えただけで恥ずかしくなって縮み上がりそうだ。スミマセンです。

ブログをご覧くださっているそうなので、おそらくこれもお読みになることだろう。

「古書店とは、なんてすばらしい仕事だろうかと、つくづく思います」
と書いていただいた。
「古書店があるかぎり、作者や読者によって命を吹き込まれた本たちは、
何世代にも引き渡され、人々の一になった思いさえも、受け継いでいくのですから」

私は「まんだらけ」にも「グリム」さんにもなれない。
「百年」にもなれないし、「音羽館」にも「流浪堂」にもなれない。
「アルカディア」にも「古書 日月堂」にもなれない。
「扶桑書房」にも「月の輪書林」にもなれない。
だったら、何になれるのだ?
一体、どうしたら、何ができるというのだ?

情けない自分を導き、駆り立て、ときに諫め、そして、勇めて、
ときにぐいと引き上げ、鼓舞してくださるお客様。
私にとっては「昔日の客」ではなく「今日のお客様」である。

誠にありがとうございました。
お手紙は、以前、お客様や先輩書店からいただいた手紙とともに
大事にしまっておいて、ときどき読み返します。

検診のバリウムで、まだ腹が張っている12月9日、午後19時40分。

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