6日間限定ショップ、本日もオープン!(またしても長文)

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今朝、3時半に目が覚めてしまう。
開店日まで倒れられない、なんとかやれるのか、できるのか。
とにかく気が張っていた。
なんとか開店でき、ほっとして緊張が緩んだかと思っていたのだが。
やはり、まだ緊張ぎみなのだろうか。睡眠パターンが乱れぎみだ。

「白夜映画祭、おもしろそうだよね。行きたいね」
Mongoと、昨夜話したところ。
いつものように「はてなアンテナ」を確認したら、
岡崎さんがブログで、まさにその白夜映画祭に触れていた。

「6日間限定ショップ」、おかげさまで
なんとか無事、初日にこぎつけることができました。
一体どうなっちゃうのか、ちゃんとやれるのかとドキドキで、
オープン前、軽く手が震えました。

だれも来てくれなかったら、どうしよう・・・。

開店とほぼ同時、沼辺信一さんがお立ち寄りくださる。

日月堂での打ち合わせがてら、ついでらしい。
お久しぶりです! お元気そうで何よりです。
以前、とある催事にご来場いただいたとき、沼辺さんから
「忙しい中、来たのに。古書展といっても、これじゃあねえ。来なければよかった」
と辛口批評をいただいた体験あり。
本をご覧になりながらの開口一番が気になるが、
「ずいぶん集めたねえ。これは、どこでどうやって集めたの?」
と楽しそうにおっしゃっていただき、ちょっと安堵。
以前、散歩の途中か何かに入手したらしき招き猫2体のうち、
「海ねこさんには商売繁盛のほうをあげよう」と分けていただいた。
なんとかまだ店は続いております、とご報告することができてよかった。

おっと。こんなふうに延々、書いていくと、果てしなく長文になりそう。
経過報告ははしょります。

ふだんメールのやりとりだけでお名前と文章だけ存じ上げていた方、
名乗っていただくたび「ーーさんですか。お世話になっております」
と、合点がいくというか、お目にかかることができて大変嬉しい。
互いにそうだと思うのですが、
パソコン画面上の文字(無機質な記号?)だった人が
有機体の体温ある人へと変わっていく。

イベント報告として、こんな印象はヘンと感じる方もいらっしゃると思いますが・・・。
ご来場くださる方とお目にかかるにつけ、
もっとも感じたのは、生身の人間がかもし出すパワー。
ひとりひとりの存在感といったら、大変なインパクトだということでした。
ふだんメールやFAXのやりとりばかりしている私にとって、
ずいぶん画期的といいますか、衝撃的でした。

日々、古書店をやっている人にとっては当たり前すぎることでしょう。
けれど、ネット古書店としてやってきている私にとっては、そうでした。

もっとも濃密な瞬間がありました。

目録でご応募くださった方が何人かご来場。

そのうちのおひとり、児童文学研究家のKさんが
「5時ごろ伺います」という事前の連絡どおりご来店。
まっすぐ店に入ってくるや否や
「Kと申します」とフルネームを名乗って頭を下げられた。
FAXでご応募くださり、資料に興味があるが、値段が貼るものだし、
どのようなものか見てみないとわからないので確認のため伺いたい旨、
ハガキでも告げられていた。
「FAXでご応募いただきましたのに、
次の連絡が遅くなりまして大変失礼しました」
と、まずはお詫び申し上げる。
Kさんは無言。余分なことは一切言わない。

無言のうち、
気になっていた資料を見たいんだ、という「気」を発している。

こちらも承知しております。

巨大アクリルボックスいっぱいの資料をご覧いただく。
海ねこ目録をお手元にお持ちの方はご覧になればわかることでしょうけれど、
とある童画家が活動記録を克明に残したスクラップ帳25冊。

「ごゆっくりご覧ください」とだけ言い残して、
なるべく邪魔にならないよう、視界から遠ざかる。
そのとたん、テーブルに向かって、資料に没頭していくKさん。
先ほどまでと別人のよう。目が変わっている。
資料のページをめくる音が続く。ずっとずっと続く。

Kさんの集中力が部屋中にたちこめ、空気を支配する。

お茶でも、などと言える雰囲気ではない。ものすごい気迫。
よけいなおしゃべりをして空気を乱してはいけない、かのよう。
ちょっと前に来てくれた旅猫さん夫妻、ろくに話もできず、ごめんなさいでした。
「わかってるから。大丈夫」と笑顔で言う旅猫さん。

Kさんは資料に没頭しながら、合間、ぽつりぽつりと語る。
「ほお、戦前のものも貼ってあるんですね。
スクラップ帳NO.1に書いてある日づけよりずいぶん前だから。
蒐集していた資料をあとから貼り込んだようですね」
「このページに貼ってある資料、薄手ものですが、
童画家の資料としてはもっとも貴重で、とても参考になります。
私は現物を初めて目にしました。
以前、ーーさんのお宅で一度だけ目にしたことがあります。
でも、ーーさんはお亡くなりになって、資料は行方がわからなくなった。
私がその後復刊したのですが、それは、
本物をもとにしたのではなく、コピーを使っての復刻でした」

ぱらぱら資料を読み込む音、沈黙が続く。

ようやく口を開かれたのを合図にお茶をお出しする。
「しかし、(こういう資料も)家族が手放してしまうんですねえ・・・」
大変場所をとるものですので、価値を感じない人にとっては
処分するしかないものなのでしょうね、
それでも、よくぞ古書市場に出てきたものですね、と心の中で思う。
Kさんは、穏やかなお顔に戻っていた。

Kさん、何をどうおっしゃるのだろう。息を呑む。
「やはりいりません。見ただけで十分。ありがとう」
とお帰りになるのだろうか。
それでもいいです、お目にとめていただき、
ご覧になりたいと思っていただいたお気持ちを嬉しく思います、
末永く、どうかご活躍ください、と心の中でつぶやく自分。

Kさんは口を開く。
「不要なものも多いです。不要なもの必要なもの、いろいろ混ざっています。
私が必要としているのは童画家としての資料なのですが、残念ながら、それが多いわけではない。
・・・・・・ですが。おそらく私が持っておくのが一番よいのでしょう。
この資料を日本中で持つとしたら、私か、あるいは、公共の国際-か・・・。
しかし、国際ーはもうなくなってしまうので、三月で」
ええーっ、そうなんですか、と心の中で驚く。
とともに、ああ、Kさんか国際ーしか買いそうにないものを
私は古書市場で買ってしまったのか、高かったっけなあ、
ああ、またしても。
またしても、買い手の現れそうにないものを抱えこむところだった。

実際のところ、今回その資料に応募してきそうな人は、
おそらくKさんしかいない。

緊張のあまり、しどろもどろの私。
「資料を活用していただけるのであれば、いちばんありがたいです。
古書市場で重要な資料だと感じて頑張って買ったは買ったんです。
でも、私が抱え込んで死蔵してしまったら、意味がないので。
だれかがきちんと調べて、この人の活動や思いを記録して、きちんと残していけたら。
そうすれば、童画家さんもきっとお喜びになると思います」
すでに没して久しい方であるが。
頷くKさん、瞬間、そのとおりとばかり笑顔を浮かべたような。

ご自身は今、さまざまな執筆に追われながら紙芝居のご研究をされていること、
時間がなく、どこまでやれるかわからないけれども、
この資料を持つなら私だろう、ということをおっしゃられる。
「なんとかある程度まとめておけば、私が死んだあとも
童画家さんの功績はきっと受け継いでいくことができるでしょう」

あとで調べて知ったことだが、Kさんは七十代後半。
精力的に執筆活動を続けるKさんではあるが、
さらにいまのいま、膨大な資料を抱え込むのは、
どれほど大変な決意を要することかと思う。

その後、お引き留めして申し訳なかったが、齋田喬について質問させていただく。
何も見ないで、すらすら流暢にご説明くださるKさん。
メモをとりながら思い出したのは、
「店をやっていると、お客様がいろいろ教えてくださる」と
しばしば日月堂さんが口にしている言葉。

初山滋に聞き書きしたこうこうこういう資料があります、
昭和ー年、小川未明本の装丁もやっています、
児童書ですが美しく妖艶で、子どもが見たら怖がるような絵かもしれません、
「見るだけなら見せてあげてもいいですよ」・・・。

「目録の以前の号はあるんですか。
これから宜しくお願いします」と、このうえないお言葉。

「今日は帰ります。夕飯の支度をしないと」と、ちょっと照れくさそうにつぶやいて
お帰りになった。

Kさんが資料を入手しようと決意なさるまでをともにさせていただいた時間・空間を、
私はきっと忘れない。

長くなってすみません。いろいろ書いておきたかったのですが、
Kさんのことは印象が薄れないうちに書き留めておきたかった。
Kさんはネットをご覧にならないのですが、書かせていただいてもたぶん
ご理解をいただけるだろうと感じて、書き留めさせていただきました。

そうそう、思い切って書いておこう。
海ねこお客様から「いつもHPの文章に感心しています。
しかも、良心的な値段で」とおっしゃっていただく。お世辞であっても嬉しい。
某店から「高い高い」と言われ続けて
気弱な自分もちょっと気にしていること。
だけどね、私も以前は知りませんでしたが、
古書店を続けていくためには、次々と仕入れを続けていく資金・体力が必要なんです。
自分が力を入れたいジャンル、力を入れたい本・資料に関してはどうにか古書価を守っていく必要があるんです、
でないと、古書店は自分で自分の首を絞めかねず、
そのジャンルの本・資料を必要としている人にとっても次第に厳しい状況になるであろうこと、
古書店が続いていくため、また、将来にわたり古書・資料を皆の手で受け継いでいくためには、
これと思うものについては、古書価を保つ必要があるのでは。すべてゴミにして消費していく一方では、将来に向かって何も残っていかないですよね。
もちろん、私だって喜んでもらいたいです、
安く買っていただいて喜んでいただきたい気持ちはありますよ。そのほうが気持ちいいでしょう。
一方、やってみて思ったのですが、いくらであっても、
「高い」と感じる人もいるだろうし「良心的」という人もいるということ。

F書房さんによれば「1000円の本を10冊欲しい人もいれば、1万円の本を1冊欲しい人もいる」ーー、まさに、そのとおりだと思う。いろいろご用意できれば一番いいのでは、と感じています。値段設定は本当に難しい。試行錯誤の連続です。

初日の夕食はタイ料理。
テーブルをともにした河野さん、Mongoと、
真砂さんのディープな話を聞くことができました。
なぜ表参道に店を持とうとしたのか、店を構えた際の決意、あれやこれや。
店をやるなら好きな街でと思った、という話を聞いて、
海ねこの脳裏に浮かんだのは、吉祥寺、恵比寿、それから神保町。
あれこれ気になってしまってグラつくばかりの、小心者の私に対して、
「店、向いてると思うけれど。
海ねこさんは人の意見を聞きすぎ。聞かないことですよ」と。取捨選択しているつもりではいますが、書きすぎていたらゴメンナサイ。
ヤムウンセン、空心菜炒め、タイふう卵焼き、魚のすり身さつま揚げ、パッタイ、
デザートはカノンモーケン(プリンみたいなもの)。
美味で良い食事でした。

南青山は人口密度がほどほど、おしゃれな店や家が点在して、
歩いていてとても心地よい。
建築を勉強する若者も訪れるというプラダに入ってみたい、
総ガラス張りのため六本木ヒルズまで一望でき、
床までガラス張り、まるで宙に浮いているようだそうです、
ナンダンナ・ナンダさん夫妻に教えてもらったカレーうどんの「青山しまだ」へ行ってみたい。
夜は気の利いた居酒屋になるらしく、深夜まで営業しているらしい。
土曜、ここに行けたらいいなと思っています。でも混雑していてなかなか入れない様子。

土曜、みちくさ市の前か後にご来場なさる方は、明治神宮前駅ー雑司ヶ谷駅間は、新都市線で1本。明治神宮前駅ー古書日月堂・6日間限定ショップのあるパレス青山は徒歩15分ちょい。並木道をそろぞ歩いてのウインドウーショッピング、人間ウォッチングも興味深く。南青山を歩くご年配の女性、服装や髪型のおしゃれぶりに、はっとさせられる連続です。

土曜、目録掲載商品をご覧になりたい方がいらっしゃるので木曜のうちに用意しておくこと。
それから、某公共団体の方が三人お見えになるため、状態確認したいという本をご用意しておくこと。
あとは、木曜たぶん人はさほど来ないと思われます。
ゆったりしているでしょう。
足を伸ばしてみようとお感じになりましたら、
買わなければなどと義務めいた気分になる必要などないですよ、どうぞお気軽に。
来週火曜・木曜あたりも、結構のんびり過ごせるかもしれないです。
話をしたい方は、何でも結構ですので話しかけてください。
本を見ている間、あまり話掛けてほしくない人には、
なるべくそうしたいと思います。私もそう思うときがあるので。

雨が降らなければ窓を開けます。
根津美術館の木々をぬって吹いてくる風が気持ちよい空間です。

とまあ木曜は余裕があると思うので、合間、値札はりもできるでしょう。
「追加しますか? 追加補充があるならまた来ます」
とお二人から聞かれたこともあり、
日々、思いついた本を追加補充していくことにしました。抱えて出かけます。

メールの返信が遅れぎみで、大変申し訳ございません。
順に返信差し上げておりますので、どうかお待ちください。

乱文、長文失礼。
Mongoも何か書くでしょう。
もしかしたら「(6日間限定ショップの)前と後で、ずいぶん変わっていることでしょう」
という河野さんの予言(?)どおりかもしれないですね。

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コメント(2)

海ねこさーーーん、とっても楽しい空間でしたよ!短い時間であんなにあたたかい雰囲気のお店が作れるなんて!
大変さはよくわかっておりますが、またどこかでやってほしいなと思いましたです。やっぱりね、お客さんと直接話ができるって、全然違いますもの………。海ねこさんと話したい人がもっともっとたくさんいると思います。

元我堂以来の、Mongoさんの店番姿もたいへんさまになっていて素敵でした。

みちくさ市のチラシ、ばっちり置いてくださっていてありがとうございました!!雑司が谷からだと副都心線が一番便利です。神宮前交差点のラフォーレとGAPの前(明治神宮前駅)まで12分で行けます。そこから日月堂さんまで歩いて15分ぐらいです。

旅猫さん、先日はありがとうございました。
旅猫さんともタメさんとも、もっといろいろ話をしたかったです。ごめんなさい。わかってるから、だなんて、か猫さんは人間が出来てるなあ、って改めて。

みちくさ市、盛況になりそうですね。明治神宮前駅からだとそうですね、日月堂と「6日間限定ショップ」があるパレス青山まで、ぷらっぷら歩いて15分ちょいかな。同じ日なので、あれこれ見てみたい人にとってもよかったですね。

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