小さな家

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電話は好きじゃない。
相手の状況がつかめず、いつかければいいのか悩んでしまう。
出にくい状況のとき、突然かかってくる電話ほど一方的で
好ましくないものはない。

が、たまに、いいなと思う電話もある。

大阪の古書店さんから電話。
初めて会話する店主さん。

「日本の古本屋に海ねこさんが出しているのを見たそうで、
お客さんがなんでも思い出の本で、
講演会か何かで使いたいらしくて。

電話ですいませんが、こちらの店に送ってもらえませんか」とのこと。

倉庫に行って探し出す。すっと見つかると気持ちがいい。
すぐ梱包して郵便局へ行き発送する。
本が、東京から大阪へと移動していく。
やがて、大阪の古書店さん、思い出の本と出会えた人、
それぞれ、古書とともに、ちょっとした楽しさを手にするはず。

よかった、その輪に加わることが出来て。

実は、梱包の際、思い出の本というので、どんな本だろうか、と、さらっと見てみた。
開発ラッシュの狭間、ぽつんと取り残された古い小さな家。
両隣に大きなビルが建ち、人で賑わう。
小さな家は自分だけ取り残されてしまった。孤独にさいなまれる。
あるとき、重機で移動させられる。
「ああ、もう自分はおしまいなのね」
・・・運ばれていく小さな家は、覚悟を決め、目をつぶる。
やがて、行き着いた先で、小さな家が目をあけたら
夢のような美しい自然の中だった。穏やかな次なる人生が待っていたのだ。
ハッピーエンドというお話。
ヴァージニア・リー・バートンのパロディーかなとも思うが、だいぶん違う。
いかにもディズニーらしいエンディング。

どこぞのどなたか知らないが、なるほど、
この本が、ずっとずっと心に残っていたんだなあ、大人になってもなお。
本が人の心にもたらす、目に見えない力。

それにしても、高い本ではない。
業者割引の1割引でお送りしたけれども、
大阪の古書店さんは利益、ほとんどないだろうなあ。
振込先によっては、かえって振込手数料が高くつくのではないか。東京への電話代で足が出たのではないか。
それでも、付き合いのあるお客さんから頼まれて、力になりたかったのだろうなあ。
古本屋ってジミすぎるけど悪い仕事じゃないなあと思う。

そして、倉庫に山積みの本たちも、
ホームページにも自家目録、月曜倶楽部にも入れないなら、
せめてどんどん日本の古本屋に入力していこうと思う。
どなたかの思い出の本、どなたかが必要としている本かもしれないのだ。
自分でもどんどん入力する。
データ入力の助っ人Sちゃんにも、末永く宜しくお願いしますと、この場を借りて。

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