古本屋「元我堂」の終焉

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阿佐ヶ谷の古書店がひとつ、幕を閉じました。

店の名は「元我堂」。

店主・やすさんは、本職・会社員で、もともとは週末のみオープンの古本屋でした。
やすさんが曜日別の日替わり店長を募集したところ、
集まってきたメンバーがユニーク。旅猫雑貨店の金子さんしかり、「はてな」トシさんしかり。
ケイスケも、石ころも、ナンダさんも、マリナも、ノンさんも・・・、その他、歴代店長は、今、それぞれの道で活躍しています。

実は海ねこもちょっとの間、木曜の店長でした。
旅猫さんに誘っていただいたのがきっかけ。
その前からオンライン古書店を始めてはおりましたが、
古本屋の実店舗で店番をしたのは初体験でした。
さまざまなお客様とお話をさせていただき、とても勉強になりました。
そして、各曜日の店長と知り合えて、今もずっとお付き合いは続いています。皆さん、ありがとう。
元我堂は、古本を媒介にした、出会いの場所だったと思います。

しかしまあ、店番は決して楽ではありませんでした。決まった時間に必ず店を開けて、
お客様がいらっしゃれば閉店時間を伸ばすときもある。
お客様のお相手で忙しい時は楽しい。けれど、ヒマなときは眠くて、店の仕事をしても、すぐまた眠くなってしまうので困りました。

後半は買取もしていたようですが、基本的には店主らが手持ちの本を持ち寄っていただけだし、
そう売れるわけではない。古書店のリアル店舗を続けていくには、
並大抵の努力では無理ということを、各曜日の店主それぞれが学んだと思う。

古書展への参加に頼らず、ほぼ実店舗だけで続けている古書店
ーーたとえば、神保町の店にしても、音羽館、ささま書店、流浪堂、百年にしても・・・。
どこも、それぞれ、どれほどのエネルギーを店の棚づくりに向けているか知れません。

「元我堂」は元我堂で実はまあ人知れず、結構、努力もしてきたのですが、
でもやっぱり、もうちょっとなんとかすべきだったのだろうなあ。
古書を回転させていくだけの資金をもっと産み出せるよう、
もう一頑張り、二頑張りが必要だったのかもしれない。
長年続けていくには、あのままじゃ無理だったと思う。

だけど、愛されていた元我堂。
ギスギスしていなくて穏やかで青春(モラトリアム)再び、みたいな。楽しかったな。店をきっかけに、恋人になったカップルあり、夫婦になったカップルあり(しかも複数!)、でした。いい雰囲気がどこから生まれたものなのか、あの雰囲気は意図して狙えるものでなし。お客様からも「落ち着く」「居心地がいい」と愛されていたと思います。ホッコリして過ごせる空間でした。

経営は店主やすさんに、おまかせでした。店の経費すべてを分担ということだったら、皆もっと必死になったのか。その場合、穏やかな空気のままだったかどうか・・・。日替わり店長時代の元我堂は、商売でなく、一ムーヴメントだったのか。
閉店は正直、ちょっと悲しい。
引き継いで店をやる人がいなかったのかな、海ねこも、トシさんも。
いずれにしても、今後、形はなくなっても皆の心の中で生き続けるハズ。

これまで元我堂を支えてくださったお客様に私からも感謝したいです。
やすさん、ゆうこさん、日替わり店長だった皆さん、ありがとう。
元我堂、ありがとう。

東京新聞 5月25日
日替わり店長 お疲れさま 阿佐谷の古書店「元我堂」 きょう閉店

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20080525/CK2008052502000113.html


2006年「月刊チャージャー」より
IT関連企業宣伝マンにして、古本屋店主
http://promotion.yahoo.co.jp/charger/200606/contents01/theme01_03.php

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コメント(4)

海ねこさん こんばんは。

あれから、もう、3年が経つのですね。

元我堂、この日曜日が最後の営業でした。

幾人かのお客さんに「ざんねんです」と声を
話かけられました。
ただ、ただ、ありがとうございましたとの
言葉を返し。

海ねこさんが書いておられるように、
みんなの心のなか、記憶のなかに
元我堂が、いつまでも生きつづけますように。


ゆうこさん、コメントをありがとうございます。
お元気でしょうか?
やすさん、ゆうこさん、お疲れさまでした。
そして、ありがとうございました(たぶん、私だけでなく、大勢の人の声でもあることでしょう)。

海ねこ先生、明日、雨みたいですけど、雨天順延ですか。当日、8時半ぐらい段階で、決行か、順延か、メールいただけますでしょうか。すいません。
生徒の岡崎武志

メール差し上げましたとおりでございます。
いやあ、高尾の木々が雨を浴び、歓喜の声をあげていることでしょう。やっほい。

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