いわさきちひろの凄み

| コメント(0) | トラックバック(0)

気分転換もかねて、ちひろ美術館へ行ってきた。
「ノルシュテインの絵本づくり展」が
想像よりはるかによかった。
ノルシュテインの感想は
気が向けばまた改めて書くことにする。
連れの感想はこちらに。

昨日は、いわさきちひろの年表を見たりして、
彼女が「生身の人間」であったことを思い知った。
前にちひろ美術館に行ったときは年表を見る余裕がなく、
あんなにきれいな絵を描く人が、
壮絶な生涯を送っていたことを知らずにいた。

20歳、婿養子を迎えて結婚。夫の勤務地である満州へ。
21歳のとき、夫が自殺。
27歳、長野で日本共産党に入党。
31歳、共産党の松本善明と結婚。
48歳、夫が衆議院議員に。
52歳、十二指腸潰瘍になる。
55歳、癌で死去。

「知ってるつもり」ふうにいえば
激動の人生と言えるだろう。
天使のように可愛らしいお顔だし、
人あたりはひじょうに柔らかかったらしいが、
日記の一部が文庫に掲載されているのを見ると
気性は案外、激しかったらしい。
師事していた丸木俊ふうの絵を描くほうが似つかわしいのではと思う。
しかしながら、彼女が描く絵は、
あくまでも、子供の無垢さ、健康で純粋、繊細な部分だ。
ファンタジーの世界といっていい。

夫と自分の親と同居して介護もしていたらしい。
夫は仕事で忙しく、
家庭のことは彼女がひとりで切り盛りしていたようだ。

きれいな絵を描くのは、
日常生活において唯一の逃げ場だったのかも。
かえって、彼女の業の深さというか、
美しい絵にこめられた凄みを感じる。

もっといろいろ知りたくなり、
「ノルシュテインの絵本づくり展」
「ユーラシア・ブックレット アニメの詩人ノルシュテイン」
「ユーラシア・ブックレット ロシア絵本の世界 おはなしは国境を越えて」
「妻ちひろの素顔」(松本善明)
「いわさきちひろ 知られざる愛の生涯」(黒柳徹子 飯沢匡)を購入。
最後の文庫本には、
絵の教室で、生徒どうし順番に
裸像のモデルをつとめた話があり、
ちひろさんも裸になっていたことが書かれていた。

帰宅後、買取本の査定をする。
特別に読者から愛されていたらしく
キリトリが多い雑誌なのだ。
何十冊だか、キリトリや書き込みの有無を確かめるため、
ページをめくりながらノンブル(目次)を目で追う繰り返し。
何ポだろうか、活版の小さい数字を
追い続けて目が痛くなる。
古書店なら皆やっていることだろうが、
古本屋って地味な作業の繰り返しだなあと思う。
時代の寵児みたいに
脚光を浴びている古書店主はごくごく一部の人だし、
その人であっても、裏では
日々の地味な作業に追われているんだろうなあ。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.omaken.com/mt-cgi/mt-tb.cgi/4655

コメントする

2012年4月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

アーカイブ