赤ずきんと名作絵本の原画たち

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「トロースドルフ絵本美術館展 赤ずきんと名作絵本の原画たち」展を見るため、
板橋区立美術館へ。

到着したところ、12日は赤ずきんの原作者
シャルル・ペロー(1628年~1703年)の誕生日ということで、
赤い帽子の(赤ずきんふう)学芸員さんからお話がありました。
私が聞いたのは途中からでしたが、充分おもしろかった。

1800年の古書から始まり、石版画に手彩色したもの、
ベルリン1枚絵ほか、各時代・各国の赤ずきんがズラリ。
想像以上にすばらしい本が多数あり、
はっとさせられる連続でした。ああ、眼福。
思いきって行ってよかったと思いました。

これらはチューリッヒに住んでいたヴァフトマン夫妻が
ドイツ・ケルン郊外のトロースドルフ美術館に寄贈したもの。
編集者として世界中を旅した夫妻が各地で購入し、
一方、趣味を知った友人から寄せられた本たちなのだそう。
夫妻はチューリッヒ中心で書店経営を続けていました。
ひじょうに絵本に詳しく、良い書店として有名だったらしいです。

レベルの差はあれど旅好き、絵本好き、編集好き、書店経営ということで、
勝手に自分との共通点を見出して喜ぶ私。
生涯をかけて蒐集し続けるとしたら、何がいいのかしらん。
赤ずきんに目をつけるとは、さすがだなと思いました。

ずきん1つ、足元1つとっても、あんなにバリエーションが豊富だとは。
国によって、赤ずきんとオオカミの出会いの環境、
室内の家具があれほど異なるとは。
年代を追うごとに、オオカミが大きくなっていき、
次第に擬人化されていくさまがユニーク。
戦後、各国でアヴァンギャルドな赤ずきん、
アーティスティックな赤ずきんなど、どんどん多様化していきます。
当店に在庫があり、更新待ちの本も見つけました。

いずれにしても、コレクションも極めていくと充実した文化となるのですね。
まとまった絵本は貴重な文化遺産。
夫妻や周囲の人々の努力、関係者らの尽力ぶりに感銘を受けました。

夫妻と親交が深かったビネッテ・シュレーダーからの
イラストつき手紙が大変おもしろい。
封筒の宛名部分のイラストは、赤ずきんのバリエーション。
デザイン・画風はいろいろ。
描き文字や切手も含め、1枚1枚が作品そのものです。
エリザベート・ヴァルトマン70歳の誕生祝いに、
絵本作家らが贈ったイラストも展示されていました。
ひじょうに人々から愛されていた人だったのですね。
図録には、エリザベート・ヴァルトマンの最期に間に合わず、
ベッドの傍らで彼女を描いたというビネッテ・シュレーダーの文章がありました。


↑図録です。装丁が良いですね。
 このイラストもビネッテ・シュレーダーによる封書。
 よく見ると(見えます?)あて名が「Elisabeth Waldmann」となっていますね。

トロースドルフ絵本美術館所蔵の絵本原画も充実。
(赤ずきんの部屋とは通路をはさんで別室。
こちらのほうが空いています。ゆっくり見たい人にはチャンスかも)
ヤーノシュ、レオ・レオーニ、ドゥシャン・カーライ、スタシス・エイドリゲヴィチュスほか。

とりわけ魅せられたのは、ヨゼフ・ウィルコンの原画。
好きな絵だとは思っていましたが、
「ミンケパットさんの小鳥たち」「シャンクテレア」の原画にひきつけられ、
私の中で時間がとまってしまったかのよう。
印刷によって印象がまったく異なりそうなので、
発売当時に近い版など、あれこれ集めてみたくなりました。

美術館そのものが木々に囲まれていて素敵。
絵本を読んで、目をあげるとガラスから差し込む陽光、
そして、日にきらめく冬木立が見えます。

今回の「赤ずきん」の企画自体、
子供向けに随所にクイズが貼られていたり、
解説文や陳列方法など構成もよかった。

学芸員さんと話したくなるなんて私には珍しいことですが、
意を決して質問をしにいく。
石版、木版、オフセット印刷など印刷の変遷について興味があり、
かねてより知りたいことがあったのだが、
印刷のプロでないとわからない領域だと言われた。

なお、この展示は15日まで開催。今日の午後はとても混んでいました。
ゆっくり見られる時間帯があるなら、できればもう一度行きたいぐらい。
でも、会期中の終盤は混雑して当たり前ですね。

各地での会期予定
4月22日ー5月28日 刈谷市美術館
6月10日ー7月17日 北九州市立美術館(分館)
7月25日ー9月10日 高岡市美術館

帰宅後、またしても、ちょっとした事件発生。
何冊か本がダメになってしまったことが発覚して、うなだれる。
当店の本、大半は半透明の収納ケースに入れてあります。
本当はケースに入れてしまうと半透明とはいえ、
何の本があるかわかりにくくなってよくないのです。
本当はすべて背が見えるように書棚におさめるのがいちばん。
書棚にも収納ケースにも入りきらないため床に置いておいた本が数冊、ダメになりました。
ねこのせいで、とは書くまい(書いたけど)。いけないのは自分です。
発送のため佐川急便に行く。その足でホームセンターに駆け込んで、
収納ケースを買って帰る。

立て込んできたため、少し新着本休みます。

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