買取とライブと目録と…

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初夏のような陽射し。
今ごろ、神保町の古書会館では
大量の出品本が台を埋め尽くし、
どんどん開札が進んでいることだろう。
良い本がたくさんあったのだろうなあ。
それなのに、私は自宅にいる。

孤島に取り残されたような気分。

が、今日のところは、自分から“孤島”を選んだので致し方ない。

なぜなら、今日は目録「月曜倶楽部」(6月4日発行)の締め切り日だから。
未完成な部分を調整して、印刷所に入稿したいと思うのだ。
締め切りの昼ごろまでにやりたかったのだ。
だが、夕方になろうとしているのに
いまだ集中できない自分を持て余している。
仕方なく、風呂に入ってみたり、汁物のうどんを食べてみたり、
発送など体を使う系の仕事をしてみたりと、ひとり、もがいている。

まったく参ったなあ…。
まさか、目録の締め切り日に体調不良になるとは思わなかった。
体調不良といっても、単なる飲みすぎですので、ご心配なく。
自己管理が不十分? はあ、そのとおりです。

昨日は、やはり夏のような陽射しのもと、
買取に出かけた。
本をお譲りくださった方は、編集者夫婦。
むかしむかし、ご近所の人が引っ越すときに
プレゼントしてもらったものだという。
お子さんはもう高校生だし、
クラシカルな絵本には興味を示さなかったと残念そう。
編集者であるだけに、
じっくりよい本につくられていることを直感し、
処分するには忍びなかったのだという。
「お探しの方がいらっしゃいますので、
ありがたいです」
と話したところ、心底ほっとしたような笑顔になられたのだった。
編集者だからこそ、本をつくる苦労も喜びも
よくよくご存知なのだろう。

私も本づくりにずっと携わってきたので、
本をぱらぱらっとめくると、編集者がどのぐらいその本に
思いをこめてつくりあげたものか、
あるいは短期間にパパッとやっつけでつくったものなのか、
直感でかぎ分けることが結構多い。
外国の本であっても、文字が読めなくても同じである。
本づくりに携わっている人は、
おそらく似た感覚で本を手にとるのだろうと思う。

お譲りいただいたのは、
探していらっしゃる方がかなり多いシリーズ。
当店にも問い合わせをいただくたび、
「できるだけ探すよう心がけます。
しかしながら市場にもなかなか出てきませんし、
古書ですので、入荷の見通しがたちません」
と、深謝するばかりだったのだ。

今回お譲りいただいたものは、
多少、鉛筆の落書きやイタミはあるものの、すべて揃っていて、
なんと付録までついていた。
児童書は、お子さんがぼろぼろになるまで読み込んで、
イタミまくって廃棄されることが多い。
古いセットものがきちんと揃っていて、
しかも付録まで残っているとは、とてもレアなケースだと思う。
金額をお知らせしたところ、
「そんなに…。いいんですかー」
と恐縮していただいたが、
経済的に余裕があるなら、もっともっと支払いたくなるぐらい、ありがたかった。

問題は、このシリーズ、
欲しい人が大勢いたとしても、お手もとにお届けできるのは、おひとりだけということ。
せっかく全巻+付録まで揃っているので、
できればまとめて販売したい。
考えた末、目録に掲載して、
複数の方から注文が重なった場合、公平に抽選することにした。
どんなに欲しいと切望されたところで、
1セットしかないのである。
1セット用意できただけでも運がよかったのであり、
買取でお譲りくださった方が名乗りあげてくださったからこそなのであって。

そんな販売方法に不服な方もいらっしゃるかしれないが、
ほかに、どうすることもできない。
古書店って、努力だけではどうすることもできない面もあり、
これが私の精一杯。ということで許してもらうしかない。

昨日は、そのセットのイタミ部分を補修したりしていたら、
あっという間に出かける時間。
急いで、吉祥寺・スターパインズカフェへ。

友部正人コンサートシリーズ
[言葉の森で ~第9回~]で、ゲストはふちがみとふなと。

友部さんもふちがみさんも、
おふたりの歌声は歌詞がとてもよく聴こえる。
聴いていると、さまざまな光景が思い浮かび、
忘れかけていた記憶が次々に浮かんできて驚く。

たとえて言うなら、
指にささったトゲを抜いたあと、
真綿でくるまれるような気持ち。
魔法の鏡をのぞかせてもらっているような。
「湖に落とした斧は金でしたか? 銅でしたか?」
と質問を投げかけられているような。

言葉を大事にしている歌い手さんとして、
私の中ではフェイバリットな方々。
ふなとさんのベースも大変大変すばらしく、
言葉以上に物語るときも多々あり。

終わってから、ちょこっと飲みながら澄子さんとお話しさせていただく。
友部さんの詩集を購入して、サインしていただく。
「実は10年ほど前に取材させていただきましたことがありまして」
と、ご挨拶させていただいたのだが、
友部さんはまったく記憶にないようだった。
それもそのはずである。
あとで考えたら、10年どころか十数年前になるのだもの。
一編集者だった私など、
青くさく、手腕もなく、存在感の欠片もなかっただろうし。

ということで、
連れとライブの感動を語り合いながら
酒量が増してしまったわけでして…。
はあー、これで書き出しに戻ります。
目録の空いている欄を埋めなければー。
冊数の調整もまだだよ。
まだ値段を決めてないものもあるよー。
印刷所に送る前に全点、確認したいのにー。

目録は、ネットをご利用にならない愛書家の皆様にも
ご覧いただくものであり、
うちはこんなものを扱っております、という広告でもある。
良いものにしたいという志とは裏腹の自分よ、
ああ、うう…と呻いて、うなだれる。
さらに不調が続くようなら、目録作業はもう少々後回しにして、
その前に、ご注文いただいたセットものの確認作業に入ろう。
それとも、近所の川辺でも走ってこようか。ジタバタジタバタ。
目録の締め切りは昼だったのだが、
夜のうちに印刷所にメールしようと思う。
半日の締め切り遅れ、許していただけるだろうか…。

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