1.古書店の仕事(01/14 15:52)


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以前、蒐集なさっていた蔵書のご整理を任せてくださった方
(ー勝手ながら、Yさんと呼ばせていただきます)に賀状を出したのですが、返事がないままでした。
「Yさん、どうしてるんだろう」と先日も話していたところです。

たった今、お兄様から1通の寒中見舞い状を受け取りました。
「弟は昨年10月に亡くなりました。生前のご厚情を感謝申し上げます」と
書いてありました。

以前より血液の癌によって余命宣告を受けつつ、通院しながら治療を続けていたYさん。
2012年夏、奥様を癌で見送った1週間後、
蒐集し続けていた絵本を整理することを決意され、当方にメールをくださったのでした。
絵本を置いてミニギャラリーとして公開していたYさんでしたが、
そのスペースを整理してアトリエにし、
1作でも2作でも、自身の絵を描くことに集中したいのだと。
そこには、写真を撮られるのが嫌いだったという奥様の
若きころの写真が飾られていました。
奥様はずっと絵を描くことを応援していたそうで、
写真があると奥様がそばにいて
「良い絵を描きなさいね」と励ましてくれているような気がすると
話していました。

Yさんにとって、1作でも自分の良い絵を描き残したいというのは
切なる願いであり、強い希望でもあったのだと思います。
自然の色を描くのに、絵の具をどう使っても、
思ったような色を出しにくいのだと話していました。

本をご整理されたことについて、いろいろな思いがあったことでしょう。
ただ、蒐集し続けてきた絵本がなくなって、寒さは募る晩など、
どれほどさびしい思いをなさることかと想像するのは難くありませんでした。

本を運び出す私たちをじーっと見ていたYさん。
何をどう話せばいいのか、、、、
沈黙を埋めるかのように、あれこれ口走っていた私でした。

そして、私はYさんにお願いごとをしました。
きっと、蒐集された本からたくさん吸収なさったことと思います。
作品なり絵本なりおつくりになれましたら、
ぜひ当方のHPに掲載させていただけませんか、とお願いしました。

最後にメールをいただいたのは、
2013年4月20日のことでした。
勝手に引用させていただくこと、きっとご本人はお許しくださるのではないかと、、、
はっきりとはわかりませんが、、
どうでしょう、Yさん、答えはどこにあるのでしょうか。

私はこの方のことを忘れてはならないと思う。
そして、古書店という仕事の重さ、責任を痛感します。
こういう重さを認識し、じくじくと、噛み締めていかないといけないのですね。

Yさん、作品はいただけませんでした。
ですが、軽自動車で2往復して運んだ絵本を託していただき、ありがとうございます。
おかげ様で、大勢の方が本を手にさせていただきました。
橋渡ししながら私もいろいろ勉強させていただきました。
そして、何よりも、たくさんのことを教えていただき、
本当にありがとうございます。
教えていただいたことを活かしていけますよう、努めてまいります。
ご本人にメールできないのが残念ですが、この場を借りまして
ご冥福をお祈り申し上げます。

では、最後に、4月20日にいただきましたメールより。
このメールにも、実は、欲しい本があるので
何とか手に入りませんか、と書いてありました。
Yさん、私、ちょっとはお役に立てましたか・・・・。

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海ねこ様

大変ご無沙汰致して申し訳ございません。

以前入院してる時に絵本用に書いた短い物語などが出て来ました。
今、それをリライトしています。
書き終わりましたらお送りしたいと思っていますのでもうしばらくお待ちください。
絵本については「おにぎり」というタイトルで幼年?低学年用にラフスケッチは仕上がっていますので
こちらもそのうちお送り致します。

私は今、抗がん剤の副作用と戦いながら懐かしい昭和の子供遊びのイラストと童話に絞り制作をしています。
どうぞ温かい気持ちで見つめ続けて下さい。

春なのに寒さが身に凍みます。
今日は午前中雪がちらつきました。


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